last update : 2016/12/2
パネラー:
石原、松尾、柏川、秋山
司会:
本原

松尾: 長谷川さんの話から、要素開発からプロジェクトに関わるのがよいのでは。
大型プロジェクトになると基礎開発と完成までのジャンプが大きく、大学が最後まで行うのは無理。
要素開発がブレークスルーになるような形として、プロジェクトに大きく貢献できるのが理想
本原: 秋山さん、柏川さんの意見は?
秋山: 松尾さんの意見はアルマの例に近く、要素開発は大学、実際に創るのは天文台という流れ。
私としては、大学か一部分でもクオリティチェックをして出せないかと思う。例としては深沢さん発表のX線検出器の性能評価から搬入までのようなもの。
但し、この中で個性をどう出すかは課題
石原: 大学は研究者としても成果を上げる必要があり、学生も、2-3年で結果をまとめないといけない。
SPICAでは、宇宙研がプロジェクト全体を管理し、観測装置は大学、という分担。
今年の春に、各大学がどのように関われるかを話し合い、 各研究室が得意とする要素開発を分担できると良い、という相談をした。
本原: それぞれの役割分担はどのようになるのか?
柏川: TMTでもR&Dが大学、装置に仕上げるのが天文台となっている。
戦略経費を使って各大学のR&D支援しているつもり。大学ではR&D、小型プロジェクトで結果まで出してもらう。その中で装置として立ち上げ、サイエンスまでつながれば理想的である。
一方、大学が育てたキーテクノロジーをどうハンドオーバーするのかが課題になっている。 技術を継承してそこで終わるか、その後大学がTMTに関わるのか
人材育成も大学に委ねているが、育った人が実際に天文台に来てくれるわけではない
全く異なる装置に関わることになることがハードルになっているのか?
本原: 学生からポスドクへプロジェクトが変わるときのスムーズな接続は気になる
今のD3、ポスドクはどう考えているか?
柏川: 似たようなプロジェクトであれば行きやすいかもしれない
5年間慣れた装置を離れるのはつらいか?
或は在学時に大プロジェクトにコミットさせるのがよいのか?
本原: 今TMTではたらいている学生、ポスドクは?
内山: 学生の時より大きなプロジェクトに関わるのはタイミングとしてはよいと思う
プロジェクトは変えたが、大学で行っていた事と今の仕事がマッチしているのは丁度良い
マッチング(どういうスキルが望まれるのか、自分がどういうことができるのか)が重要ではないか
松尾: 教育という観点では、ポスドクから大きなプロジェクトに関わるのはよいと思う
学生の間に小型プロジェクトで装置の全貌を把握するのも重要
本原: 博士を取った後のマッチングは課題である
プロジェクトと学生・ポスドクのお互いの発信が重要ではないか
(話を戻すが)プロジェクトと大学、企業の関係は?
深沢さんのX線の話を聞くと、メーカーが主体で大学はイニシアチブ小さいのか?
深沢: そんなことはない
装置の仕様などは大学の方がよく知っている
松尾: ASTRO-Hでは名大のX線グループが、鏡を研究室(学生)が製作していた
(性能評価は上がしていたのかもしれないが)
深沢: 名大の例が特別。装置は企業が製作していた
本原: 大学は補助的な役割なのか?
深沢: 設計の段階では大学がメーカーと一緒に行ってる
仕様策定も大学側
本原: SPICA、TMTの場合は?
石原: 概念設計は大学と企業が一緒に行っている
フライト品はメーカー、特殊な物の場合もメーカーと共同、 大学は基礎開発とキャリブレーションが主体
柏川: 日本の企業はいい技術を持っている
すばるを例にだすと、M社の技術を観測所が扱い切れていない
M社の技術をこちらで把握・管理して作ってもらったわけではないので、いつまでもこちらの技術にならない
大型になればこの傾向は強くなるはず
本原: 沖田さんの発表とつながる
地上装置はメンテナンスが必要なので技術を受け継がないといけない(身に付けないといけない)
柏川: すばるの反省は文書化ができていないこと
マニュアルがないので、人が変わると技術がご破算になっている
TMTでは文書化や、マニュアルの準備を強化し、基本的に誰が弄っても操作できる様にマネージメントする
早野: 日本だけで開発していると文書化の必要がなく、文書化はTMTのルールにのっとっている
TMTではレベル1というサイエンスからの要求がある。
この要求からのフローダウンで各装置、例えばIRISへの要求がある
要求のスキームの理解が非常に難しい。
スキームの理解や管理を天文台で行い、各要求や情報を大学と共有しできればよい
共有した上で各大学に関われるところに探して貰ったり、手を動かしてもらったりできればよいのではないか
松尾: 繰り返しになるが、大学が最先端の技術を得るのが重要だと思う
フェーズが進むごとに、大学がどういう関わりができるかが考えられるとよい
高見: 世界中のリーダーにアンケートを取ったが、日本と同じような問題を抱えている
ラボテスト、コミッショニングなど要所要所で関わってもらうのがよいのではないか
《アンケート結果の抜粋》
・どのフェースでも学べることがある(アメリカ)
・大型と小型を組み合わせている(アメリカ)
・手を打てていない(イタリア)
・大型プロジェクトには参加しにくい(フランス)
・装置、サイエンス両方を行った学生もいる(イギリス)
・装置・天文どちらでも学位をとる天文でなくても大型プロジェクト(フランス)
大型プロジェクトに関わるチャンスが大きくあるのは日本と違う
また、世界中ににあるので市場が大きい
日本の場合、日本国内でキャリアパスが限られている
柏川: ESOはうまくいっている
検出器、機械、光学と各部門に専門家がいて、下を育てたり、大学と連携したりしている
その意味で日本でのATCの役割は重要ではないか
高見: ATCの方向性も柔軟に変わるべきと考えている
すばるのときはすばるの開発に関わる学生をサポートしていた
ALMAでは受信機を作るのに集中していたので大学の優先度は下がった
今後大学との協力は必要と考えている
早野: ESOの装置グループは強力だが教育義務はない
天文で学位を取っている人が装置グループに入っていく
天文での学位、でもキャリアが装置キャリア開発というのがある
全ての役割を一か所に与えるのは破たんするのではないか
秋山: 基盤技術の継承は必要だと思う
ATC において検出器や冷却・真空といった光赤外装置の基盤技術の最先端の開発や情報が他のプロジェクトでも共有できるように更新されていると良い
現状では各プロジェクトによって再開発されている部分もある
基盤技術の更新と共有にも力を置くべき
高見: 企業と協力してブラッシュアップしている部門もある
それを他の部門にも拡大していくのには時間がかかる
長谷川; ALMAで受信器開発成功した訳は外部から人が来た事
また、使える技術は何でも取り込んだ事
全て天文台で技術を持とうとすると破綻する。
維持すべき技術を選び、他は企業や大学から探していくのがよいのでは
本原: 企業、工学系との連携は重要
閉じないことを意識しないといけない
気になっているのは人材育成をしながら大型プロジェクトに関わる難しさ
学位やプロジェクトの締め切りとのバランス
単純労働ではなく研究としてできることを学生に担当してもらえるか
柏川: IRISでは、実験のコンポーネントがあれば大学に任せている例はある
各実験で学生が参加できる余地はある
この関わり方に興味があるかは本人次第
松尾: 新しい要素技術が発展していけば武器になる
武器になるものは学位にもつながるし、世界に通用する人材になる
石原: 要素技術開発を軸にして、学位は、研究室の小型プロジェクトにしたり、 タイミングによって、大型プロジェクトへの貢献にしたりできると良い。
衛星環境試験の労働も、自分のテーマの一部にできれば主体的にできる。
海老塚: 長谷川さんへの質問に繰り返しになるが、天文学をしたいけど装置開発をしたい人はいるか?
日本の場合、天文学にいるのに装置で学位を取得するのは気が引ける?
長谷川: 色々な人がいてよいのではないか
例えばセンサーを極めたい人の背景が固体物性、電子回路、情報等だったりしてよい
一方で重要なのはSEだと思う
プロジェクトマネージメントができる天文学者、人材育成が必要なのでは
松尾: 教育において小型プロジェクトは重要である。
小型プロジェクトに携わることで、大型プロジェクトではできない、 プロジェクト全体を俯瞰することができるからである。
つまり、科学的要求からシステム、サブシステムへのブレークダウンの過程は、 小型と大型に関係なく、大型から小型へのスケーリングが可能である。
高橋: 開発、天文をどちらもしているという立場の意見が多かったが教育の立場としての意見を聞きたい
大学の独自性を持って行いなさいという運営側からのプレッシャーはないのか?
例えば名大はあかり、スピカの下請けとみなされていないか?
秋山: 大きなプロジェクトの一部だから大学の業務とみなされない、ということはない
小さな大学の研究レベルでも大きなプロジェクトに貢献できているというのはポジティブ
これはTMTの時代にも残さないといけない
高見: 大きなプロジェクトに関わることで大型プロジェクトの行い方を学ぶいい機会と捉えるのがよいのでは
秋山: ユニークさを活かした上で関わるべきだし、ユニークさをどう残すかは各研究室が考えるべき
入部: 個人的にはメーカーの経験も長い
大学は作ることをメーカーに何故任せきらないのか?
例えばALMAの実験…学生ではなく違う職種の人が行うべきだと思う。
長谷川: 実験はATCの方がした
入部: ATCの人が行ったと聞いて安心
今京大と一緒に開発をしていて、「翻訳者」が必要と感じている
つまり、技術の本質、仕様を理解しつつ現物に落とし込める人が必要
要素技術をするのもいいが、研究者が手を引くべきところがる
企業との境界線を見極めるのが重要
本原: 非常にいい観点だと思う
時間もあるので明日の議論で戻りたい
まとめると「色々な人が必要」