第1回 国立天文台光赤外専門委員会 議事録 日時:2004年10月18日(月) 13:00ー17:00 場所:国立天文台(三鷹)すばる解析研究棟2階 出席者:市川隆、大杉節、太田耕司、大橋正健、定金晃三、土居守、中川貴雄、 有本信雄、 臼田知史、梶野敏貴、郷田直輝、小林行泰 欠席者:佐藤修二、富田晃彦、田村元秀、渡部潤一 ex-officio: 参加者:安藤裕康、野口邦男、藤本眞克、吉澤正則、山田亨(唐牛代理) 欠席者:唐牛宏、吉田道利 オブザーバー参加者:家 正則 先ず第1回目の委員会開催に先立ち、委員会開催までの世話役であった光赤外 研究部主任の安藤氏より、国立天文台の組織変更に伴う、本委員会の設置目的 や経緯などについて説明が行われた。 1.議論 1-1.委員長等の選出 委員の互選により、委員長として郷田委員を選んだ。また、意見交換の後、副 委員長として太田委員、幹事として渡部委員を選んだ。 1-2.本委員会の扱う事項等について 先ず、郷田委員長より、国立天文台の新しく設定された規則に記載されている 本専門委員会の任務、取り扱うべき観測所、プロジェクト室等について説明が 行われた。規則にある取り扱うべきものは、岡山天体物理観測所、ハワイ観測 所、重力波プロジェクト推進室、天文機器開発実験センター、光赤外研究部で あるが、そのほか、MIRA、JASMINEといったAプロジェクト室、ならびに国立天 文台とも関連が深い大学等の望遠鏡計画、さらには、新規のプロジェクト、将 来計画等の議論も行うことが確認された。その後、本委員会の役割、議論内容、 方向性などについて自由に意見交換を行った。具体的には、主に以下のような 意見が出された。 ○コミュニティーからの意見として、天文台への圧力団体の役割を果たすべき である。 ○提言を積極的に行っていくべきである。 ○事務的なことばかりではだめ。戦略的なことを主に行う委員会が必要。 ○提言をどのように実現していくのか。そこが問題。 ===>本委員会は、運営会議の下にあるので、先ずは、運営会議に提言をもって いくのだろう。あと、台長と直接話し合う手段もありうるのではないか。 ○後で議論されるすばる関係の小委員会との役割分担はどうなるか。 ===>天文台のリソース要求などに関することは、小委員会からの答申を受けて、 それを実現する方向で審議し、天文台に提言する。 ○将来計画は、天文台のことだけではなくて、JAXAとの関連などスペースのこ とも含めた全体的な議論を行うべき。 ○天文台とJAXAとのこれからの関係なども議論して提言すべきである。 以上の意見を総括し、本委員会としては実務的なことだけではなく、主に光赤 外分野に関してグローバルな観点から議論を主に行い、積極的に天文台やコミュ ニティーに提言等を行っていくことを目標に進めていくこととなった。 1-3.小委員会の設置について 先ず、本委員会の下に、既設のすばる望遠鏡プログラム小委員会(以下、すば るTAC)と岡山観測所プログラム小委員会が設置されていることが確認された。 メンバーも決定しており、活動中である。 次に、従来のすばる専門委員会に代わるものとして、本委員会のもとにすばる 望遠鏡の共同利用の運営、企画等を専門に扱う小委員会の設置提案が、資料 (1−2)をもとに、旧すばる望遠鏡専門委員会委員長の家氏より行われた。 その後、議論を行ったが、主に以下のような 意見が出された。 ○サイエンスの展開やすばるの将来を見据えた議論を主に行う小委員会とすべ きである。 ○すばるでの成果をいかに増やしていくかの戦略を考えるべきである。 ○具体的な審議事項として、望遠鏡時間の使い方を考えることや、MOIRCS、 FMOS、LGSAOのGuaranteed Time(GT)等も考えることが必要。また、第3期装置 計画についても検討することが必要。 ○将来計画への橋渡しという側面や若い人をすばるに取り込む方策検討等も行 う必要がある。 ○すばるTACとの関係はどうなるのか。 ===>組織的には、光赤外専門委員会のもとにすばるTACが設置されているが、実 質はこの小委員会がTACと綿密な連携をとって進めてもらうのが良い。従来 のすばる専門委員会とすばるTACとの関係は踏襲されることになるだろう。 ○光赤外専門委員会との役割分担はどうなるか。 ===>すばるに関する詳細は、小委員会で審議。時間的な効率性や機動性からかな りの決定権は、小委員会にもたせる必要があるだろう。しかし、特に重要な ことや、天文台へのリソース要求など天文台全体と関わる事項は、親委員会 である光赤外専門委員会に答申してもらい、本専門委員会で審議し、決まれ ば天文台へ提言という筋道になるであろう。 以上の議論の後、小委員会を設定することはその必要性は十分にあるということ で、承認された。 その役割としては、すばるに関する従来の審議事項以外に、今後のサイエンスの 展開(装置開発も含む)や将来の戦略にウェイトをおいた議論を行っていくこと を目標として小委員会を進めていくことになった。光赤外専門委員会との役割分 担としては、細かい規定は今は考えず、活動を行いながらお互いフィードバック をかけて、より良い両委員会を形成していくという観点からむしろフレキシブル にしておくこととした。ただ、最終決定権は光赤外専門委員会にある場合でも、 すばるに関する審議事項やTACに関することなどで審議と執行に機動性を要求され る事項は、光赤外専門委員会にも諮り時間が大幅にかかる事態はなるべくさける ため、小委員会で実質は進めてもらう方向とする。 次に、メンバー構成に関する議論を行った。その結果、人数に関してはあまり多 いと実質的な議論はできないという観点から、台外メンバーは6名、台内メンバー は6名以内ということとなった。台外メンバーは本来、光天連といったコミュニ ティーからの意見をもとに決めるべきとの意見も出たが、今回は、小委員会を早 く発足する必要性があり、時間の余裕がないこと、また本専門委員会の台外メン バー自体が光天連から推薦を受けた委員であり、コミュニティーを代表している という観点から、今回は、本専門委員会で候補者を選定することとなった。 その結果、台外メンバー候補は選定され、本人の内諾を得るため、郷田委員長か ら依頼を出すこととなった。台内メンバーに関しては、ハワイ観測所長は役職指 定で委員になってもらうこととした。その他の台内メンバー候補に関しては、本 委員会で出された意見をもとに、今後ハワイ観測所とも相談の上、旧すばる専門 委員会委員長の家氏がアレンジすることとなった。なお、小委員会のメンバーは 本専門委員会からの答申を受けて、最終的には台長による指名、委嘱となるので、 メンバー候補が確定した段階で台長に諮ることとする。 最後に、小委員会の名称に関して議論を行った。「運用」や「共同利用」などが 委員会名に付くと、実務のみの委員会の印象になるので良くないとの意見が大勢 をしめ、単純に「すばる小委員会」とすることとなった。また、英語の名称に関 しては、ハワイ大学との関係も考慮し、従来通り、「Subaru Advisory Committee」 とすることに決定した。ただ、ハワイ大学には、名前は同じだが、従来より、サ イエンスの展開や将来の戦略の議論にウェイトを置いた委員会にすることを伝え る必要があることが確認され、委員長と旧すばる専門委員会委員長とで協力して 伝えることとした。 委員会の回数としては、年2回ぐらいでは実質の議論は不足なので、しっかりや るようにして欲しいとの希望が出された。また、すばる小委員会にかかる旅費な どの費用は、今後すばる室が持つことになるが、すばる室としてはおおいにサポー トすることが野口氏より表明された。 1-4.赤外シミュレータ移設、広島大学天文台について 大杉委員から赤外シミュレータの東広島市への設置についての経過報告があった (資料1-11)。 移設の場所については、岡山観測所ユーザーズミーティングで承認 されたことを本委員会としても確認した。岡山観測所ユーザーズミーティング以 降の動きとして、東広島市市議会で補正予算可決(予定地の整地、取り付け道路等)、 地元説明会等の説明があった。主に次の通りである。ドーム建設/望遠鏡移設予算 については、来年度中に移設する事を目標に申請中である。また、17年度人員要求 については、教授1、助手1を要求しているところである。観測装置については、ナ スミス焦点には、広視野カメラを17年度に設置して常設する。カセグレン焦点につ いては、既存分光器(TRISPEC、HBS)を設置するが、将来は新装置を考えたいとのこ とであった。また、望遠鏡本体については、高速駆動に変えたいという希望を持っ ている事、運営は外部委員の入った委員会で行うこと(現外部委員は、定金・吉田 (道)の両氏)、更に、大学に付属する上部委員会ができるかもしれないとの事で あった。運営の仕方については、今後たたき台を作るので本専門委員会で審議して 欲しいとの要望が出され、承認された。 質疑応答としては主に次のようなものがあった。 ○共同利用はどうやるのか? プロジェクトに集中する方がよいのでは? ===>岡山で行っていたような従来の共同利用とは異なる。プロジェクト指向の共同 利用を想定している。 ○運営費は? ===>まだわからない。外部資金の獲得も目指す。 ○サイエンスの眼目は何か? ===>GLAST(γ線)との連携、高エネルギー天体が主な対象なので偏光観測を行って いきたい。 2.報告 2-1.すばる望遠鏡報告(唐牛代理:山田) MOIRCSファーストライト、セメスター変更(旧すばる専門委員会で承認されている ことを本委員会としても確認)、装置レビュー、その他現状報告があった(資料1− 3a)。 その後、主に次のような質疑応答があった。 ○HIPWACは持込装置だが、観測所ではレビューしていない。共同利用の場合の扱い と異なるがどういうことか? ===>所長時間とUH枠を使う場合は共同利用とはスキームが違うと考えられる。 ○その場合でも、ケースバイケースになるだろう。 ○持込装置については、全体的にもう少し敷居を低くする方向で考えた方がよいの ではないか。 ○コスト削減はよいのかもしれないが、サービス低下等にはつながっていないか? ===>そうはなっていないと思う。予算についてここで議論する必要はないのでは? ○観測装置のラインナップはどこが決めるのか? ===>以前は、コミュニティと議論しながら最終的にはすばる専門委員会で決めてい た。今後は先ほど決めたすばる小委員会であろう。 2-2.すばる観測成果(家代理:郷田) 天文台事務への説明用として用意された、すばるの観測成果(主に遠宇宙に関する もの)の資料が回覧された(資料1-3b)。 2-3.すばる専門委員会議事録(家代理:郷田) 昨年度のすばる専門委員会の最終回の議事録の紹介があった(資料1-4)。 その後、 以下のような質疑が行われた。 ○「FMOS/MOIRCSのETとGTについて」のところで、ET(エンジニアリング時間)は所 長裁量時間(DDT)から配分し、GT (装置開発チームに保証された観測時間)は第一期 装置並にそれぞれ20夜とする、 と書いてあるが、PIに連絡が来ていない。本当に 決まったのか? 案ではなかったのか? (MOIRCSのETは既に始まっている) ===>議事録について確認する。案であるなら、この委員会and/orすばる小委員会で 継続審議とする。 2-4.岡山天体物理観測所(吉田代理:安藤) 人事、予算、事業報告等資料(1-5)をもとに報告があった。 2-5.JASMINE計画(郷田) 今年度Aプロジェクト室として発足。ミッションの目標と海外での計画との関係等の 紹介があった。zバンドで行う。大角度視野の同時観測というあたりが位置天文観測 衛星の望遠鏡の特徴となっている。超小型衛星による技術実証実験(Nano-JASMINE)を 2ー3年後に打ち上げる計画も進行中。宇宙研にJASMINE-WGができた。4ー5年で基礎開 発を行い、ミッション提案する予定とのことであった(資料1-6)。 説明後、主に次のような質疑応答が行われた。 ○Kバンドはやめたのか? ===>検出器が極めて高価。zでは減光がそこそこあるが、zの方がメリットがある面 もある。 ○CCDの開発は進んでいるのか? ===>宮崎氏の協力の下、浜フォトで進めている。 ○別のプロジェクトにおいて別の財源で同様のCCD開発/発注を始めたらどうなるか? ===>ケースバイケースでは? 関係者で話をしてはどうか? 2-6.MIRA(吉澤) 今年度Aプロジェクト室として発足。本年度の活動状況について、装置性能評価等を 行っている事、遅延線の延長、真空化等について経過報告があった(資料1-7)。 2-7.光赤外将来計画検討会(家代理:土居) 経過報告を行った。現状は、検討報告書をとりまとめ中で、各報告のとりまとめは 進んでいるが、マスタープラン策定のところで足踏み状態(資料1-8:資料後半の地上 大望遠鏡計画は省略)。 これに関して次のような質疑応答が行われた。 ○地上大望遠鏡はAプロジェクト室になったのか? ===>11月に申請する予定。 2-8.京大新技術望遠鏡計画(太田) 岡山ユーザーズミーティング以降に検討している内容として、主な変更点を中心に 紹介された。コストダウン、サイズ縮小、ねらうサイエンス等がポイントとのこと であった(資料1-9)。 次のような質疑応答が行われた。 ○分割鏡を望遠鏡にしないといけないのか? ===>望遠鏡として天文学でその性能を実証したいと思っている。 院生教育の観点か らも必要。 2-9.重力波プロジェクト(藤本) 現状報告が資料(1-10)をもとにあった。プロジェクト運営については、共同研究を特 定領域で行っているので、そちらで具体的な運営の相談をしているとのこと。本委員 会でも随時報告等行うつもりである。将来計画については、LCGTは2006年度からの予 算化に向けて活動中であることが報告された。東大宇宙線研が中心で進めている。さ らに、大橋委員から概算要求に関する追加説明が行われた。 2-10.開発実験センター(小林) 現状プロジェクト一覧が提出された(資料1-12)。中身をみると、すばる関係は少な く、電波関係やスペースが多くなっている傾向がみてとれる。次に、将来計画検討WG が発足して、5回程会合を行い、WGとしての最終報告(中間報告)を提出した(資料1- 12)。今後ALMAとの関係を深める等の案がまとめられている。 3.その他 3-1.次回委員会について 1月17日の週、24日の週の中から委員長がアンケートをとって調整することとなった。 なお、次回の主な内容は、光赤外分野の将来計画(地上大望遠鏡やスペースなど)、 その実現に向けた戦略、そのための本専門委員会が果たすべき役割などの議論を行う。 必要な審議事項以外の報告事項などは極力短めに行うこととする。 以上。 配布資料一覧 1−1 委員会名簿 1−2 すばる小委員会設置提案 1−3a すばる望遠鏡報告 1−3b すばる観測成果 1−4 すばる専門委員会議事録 1−5 岡山観測所報告 1−6 JASMINE報告 1−7 MIRA報告 1−8 光赤外将来計画検討会報告 1−9 京大新技術望遠鏡計画 1−10 重力波報告 1−11 赤外シミュレーター移設、広島大学天文台報告 1−12 天文機器開発実験センター報告