第3回 国立天文台光赤外専門委員会 議事録 日時:2005年4月26日(火) 13:00ー16:45 場所:国立天文台(三鷹)大会議室(ハワイ観測所とTV会議) 出席者:市川隆、大杉節、太田耕司、大橋正健、定金晃三、土居守、富田晃彦、 中川貴雄、臼田知史、梶野敏貴、郷田直輝、小林行泰、田村元秀、渡部潤一 欠席者:佐藤修二、有本信雄 ex-officio: 参加者:安藤裕康、唐牛宏、野口邦男、藤本眞克、吉澤正則、吉田道利 欠席者: 家 正則、常田佐久 1.議論 1-1.議事録の確認  前回の専門委員会の議事録(資料3−1)は、すでに電子回覧で承認をもらっ ており、幹事会議ならびに運営会議にも報告されていることが郷田委員長より 説明されたが、あらためて確認を行った。 1-2. 小委員会委員の選出方法に関して  郷田委員長から提示された小委員会委員の選出方法案(資料3−2)に関して 議論を行い、一部修正の上、以下のように執り行うことが決定された。 (1) すばる小委員会 光赤外専門委員会が以下のような推薦を受け付けたうえで、議論の後、推薦候 補者を決定。その後、台長に承認をもらう。 - 台内メンバー:すばる小委員会からの推薦 - 台外メンバー:光天連からの推薦およびすばる小委員会からの推薦 光天連には、光赤外専門委員会から推薦を依頼。委員の任期は、2年で光赤外 専門委員会と同期。新規の光赤外専門委員会が、委員候補を決める。 (2) すばる望遠鏡プログラム小委員会  先ずは、すばる小委員会が、台内/台外委員の区別はなく、光天連とすばる 望遠鏡プログラム小委員会からの推薦を受け付ける。推薦候補を決定し、光赤 外専門委員会に諮る。光赤外専門委員会で議論、承認の後、台長に承認をもらう。 任期は2年。光赤外専門委員会とは同期しない。   (3) 岡山観測所プログラム小委員会  従来通り、光赤外専門委員会が、岡山観測所プログラム小委員会と岡山観測 所から委員の推薦を受け付けて、議論の後、推薦候補者を決定し、台長に承認 をもらう。  任期は2年。光赤外専門委員会とは同期しない。 1-3.すばる小委員会での委員辞退について  太田すばる小委員会副委員長より、小委員会委員の齋藤正雄氏が本務で多忙 なため、委員を辞退したいとの申し出があり、すばる小委員会ではその申し出 を承認した旨の報告がなされた。それを受けて、本専門委員会でも議論後、本 件を承認することとした。なお、すばる小委員会では、齋藤氏からすでに、野 辺山の経験など、重要な意見/コメントをもらったので、補充については不要 と判断した旨の報告もなされた。これを受けて、主に意見交換を行った。 ○齋藤氏が辞退すると委員の分野に偏りが増大するのではないか。  ===>関連する分野の方をコメンターとして招聘するようにしている。次回の      小委員会では太陽系/系外惑星の専門家を呼ぶ。 結果として、本専門委員会でもすばる小委員会の委員を補充はしないことを決定した。   1-4. 広島大学と国立天文台が取り交わす協定書案について 大杉委員より資料(3−4)をもとに、協定書の説明が行われ、さらに協定書内の 「共同利用」について自由に意見を出して欲しいとの要望が大杉委員から出さ れた。これを受けて、主に以下のような意見交換を行った。 ○共同利用研究機能の一部を担う。経費の負担は審議に依る。と、案にはある が、具体的な内容は何か? ===>すばるのシミュレータとしての役割等を担う。 ○専門委員会というのがあるが何か? ===>プロジェクト研究を立ち上げるので、プログラム委員会なども作る予定。 ○運営委員会・専門委員会の構成や役割は? ===>運営委員会は既にある。学外委員も2名入れているが、国立天文台の 人が入るとは明記していない。ただ、そのつもりではいる。 ○「客員教員」とわざわざ明記する理由は? なぜ第5条に明記しないといけないか? ===>運営委員会では人事も扱うので、当事者を入れるわけにはいかないから。  さらに、大杉委員より、もし他にも意見がある場合は、後で連絡して欲しい 旨の要望があった。 1-5.MOIRCSのGT夜数拡大の提案について  すばる小委員会で検討されている内容について、すばる小委員会副委員長の 太田委員より概要が報告された。これを受けて、小委員会での議論内容の詳細 や今後の進め方やスケジュール等に関して質疑応答を行なった。しかし、内容 の詳細まで審議および承認するには、資料等の準備が未だ整っていないため、 すばる小委員会で先ずは審議内容を整理し、本委員会に提出してもらうことと なった。また、すばる小委員会委員長と本委員会委員長との間で、本件のよう な議題に関しての両委員会の関係や今後の進め方について協議をすることが提 案され、承認された。 1-6.光赤外分野の将来に関して―PartII (1) 重力波計画について(藤本、大橋)  藤本氏と大橋委員より以下のような報告が主に行われた(資料3−5)。 (a) TAMAプロジェクト ○自動化して定常運用可能に。観測時はエキスパートが待機している。 ○感度はour galaxyでの中性子連星合体がS/N=10で検出可能。 ○昨年度はノイズ対策を中心に実施 ○基線長300mで1999年観測開始。現状の競争相手は4kmのLIGO(USA)が2003年か    ら観測開始。もう一つは3kmのVIRGO(仏伊)で観測準備中。 ○安定性はTAMAがもっとも上。LIGOはL1(4km)で22%、H1(4km)で69%、H2(2km)で63%。 (b) LCGT ○キーワードは「神岡・低温・3km」 ○競争相手は現在稼働中LIGOの後継機Advanced LIGO。感度は同等。 ○観測可能な中性子連星合体は7億光年まで見渡す。    1年間に10個程度の事象(中性子連星合体事象)を検出可能な期待値    (TAMAの期待値は10E-5。10万個の銀河を観測して年に一つという期待値) ○低温技術については、CLIO (100m低温レーザー干渉計)が神岡で既に実験中 ○南極にあった超伝導重力計を神岡に移設してデータ取得中。スマトラ沖   地震で励起された地球自由振動を現在も検出中。 (c) スペースからの重力波検出:DECIGOに向けた技術開発の開始 報告の後、主に以下のような質疑応答が行われた。 ○Advanced LIGOはどう感度を上げるのか?   ===>ビームを広げて、熱雑音の効果を下げる予定(LCGTは鏡を冷却する) ○スペースからのメリットは?   ===> 地球の重力場の変動を無くせる。   ===> mHz帯を観測しようと思うと、レーザーは直線で進むので地上では地球の       大きさの制限で不可能。 ○どこから来た重力波か分かるのか?  ===>初めはどこから来たかは分からない。世界でネットワークを組んで、 時間差で場所を特定するしかない。 (2)MIRAプロジェクトについて(吉澤)  資料(3−11)をもとに主に以下のような報告が行われた。  ○新研究員として北大から村上尚史さんが参加。 ○H16-H18に、これまでのまとめとフリンジ追尾や近赤外などの技術開発をおこなう。   1mas〜0.1masの分解能を持つ大型干渉計を2010年代の早い時期に建設したい。  ○3年を目処に概算要求できる体制を確立したい。 ○VLTIでは自走式システムが稼働中。 ○世界の光干渉計:大型(8-10m)、専用多素子(1-2m)、恒星干渉計(<1m)の3 つに分けられる。MIRAは3つ目の分類。  ○VLTIでは高速回転星を発見(Alpha-Eri)。 ○H17年度の目標:恒星視直径と連星の観測、フリンジ追尾技術の確立、国内 外の共同研究、VLTIとの共同を協議中。さらに、近赤外領域の有効性の検討、 次期大型干渉計の具体的な検討を開始する。 報告の後、主に以下のような質疑応答が行われた。 ○観測可能な天体は?  ===>100個程度はリストアップできるが、10個を集中的におこなう予定 ○次期計画に向けて、日本の特徴は何になるのか? ===>日本は遅れているので、同じことの繰り返しは良くない。独自の技術 を持ちたいが、まだ突破口がないのが現状。 (3) 京大望遠鏡計画(太田)  太田委員から主に以下のような報告がなされた。 ○半年前に報告した内容と特に大きな変更なし。強いて言えば、ナスミス焦 点の検討と、鏡を六角形からバームクーヘン型への変更など。 ○予算獲得の方法について、ここ1,2ヶ月で大きな進展があった。双方向 共同研究・大学連携による先端的天文学の共同拠点形成(仮称)を検討。 岡山3m級新望遠鏡計画推進、TAOのR&D、国立天文台のJELTのR&D、VLBI運用の 4つのコンソーシアムを組むという案。 (4)すばる望遠鏡の10年プラン(続き)  すばる小委員会での検討状況が、太田委員より主に以下のように報告された。 ○Geminiとの共同開発についてと、すばる独自の装置の10年計画の2面に ついて考えている。  ○前回の小委員会ではMOIRCSのGTがメインだったので、10年計画については    時間をかけて議論はしていない。 ○Geminiとの共同開発について、WFMOSをすばるに付ける案件に対しては、 コミュニティの意見収集もできていないので、これから2,3ヶ月以内で回答 案を出すのは困難と判断した。夏に予定しているシンポジウムなどで意見を収 集したい。議論には、じっくりと1年ぐらいはかけたい。 ○3/20-21にGeminiでFeasibility Reviewがあった。その結果、今後は、 すばるに付けることを前提にして、WFMOSの概念設計に進むことになった。  次に主として以下のような意見やコメントが出された。 ○小委員会での議論の進み方の速度に、光赤外専門委員会の開催頻度では ついてゆけない。議事録案のレベルで専門委員会に出して欲しい。 ○ユーザーズミーティングやシンポなどのスケジュールや世話人選びなどを すばる小委員会委員長が責任をもってして欲しい。 ○プランニングウィークのヒアリングで唐牛所長が説明し、Hyper-Camと WFMOSの検討に対して予算要求をした。補正光学系と作成、望遠鏡I/Fなどの 技術検討をする。 ○国立天文台で作る予定のすばる10年計画ワーキンググループについては、 特に進捗なし。  意見交換の後、本専門委員会としては、すばる小委員会の本案件に対する 審議方針はサポートすることとし、本専門委員会への迅速な情報提供をすばる 小委員会へ要望するとともに、引き続き審議を進めてもらうこととした。 1-7. 光赤外専門委員会について  本専門委員会の次回以降の進め方やスケジュールになどについて議論を 行った。先ず、郷田委員長より、前回の専門委員会では、次のように決定 していることが説明された。 ○次回は、8月頃の大学の夏休み中に岡山観測所で合宿形式で開催。内容は、 すばるの10年計画や光赤外の将来計画に関する提言内容などの議論を行う予定。 ○最終回は、来年1,2月頃に開催予定。 これに対して、8月下旬に開催予定のすばる小委員会シンポジウム(仮称)の 直後にすばる小委員会を開いてもらい、小委員会ですばるに関する将来計画に 対して、ユーザーの声を反映させた検討を行った後(9月初旬から10月中旬 頃まで)で、本専門委員会を開催した方が良いとの意見がだされ、意見交換の 後、日程はそのように変更することが決定した。また、日程の変更に伴い、 場所も岡山観測所ではなく、三鷹に変更することとした。  さらに、11月頃のハワイでのUM、ならびに1,2月頃の通常のすばるUMも 予定されているが、8月のシンポジウムも含めて、すばるの10年計画の議論 の場として系統的にアレンジしていくことの重要性が指摘され、本専門委員 会委員長や唐牛所長、野口すばる室長の協力のもと、すばる小委員会委員長に 責任をもってアレンジを進めてもらうことを御願いすることとなった。 2.報告 2-1. UH88/UKIRT利用状況(田村) 資料(3−9)をもとに、主に以下のような報告が行われた。  ○5つの装置がUH88に搭載されて試験観測済み。  ○UH88:Pan-STARRSの進捗に依るが、引き続き同程度で検討している。  ○UKIRT:WFCAMの遅れにより共同利用できなかった。そのため昨年度の予算は返上。   今年度はWFCAM中心。これまでの平均倍率は約3倍。 ○昨年度予算(査定額)は約5200万円。 ○TACはフレキシブルな体制にしている。 ○成果:当初の目的は果たしていると言える。UKIRTで成果が少ないのはWFCAMの遅れ。 ○今後:もし支持があればAATやSALTなど南天へのアクセスも検討したい。   2-2. ハワイ観測所(唐牛)   GeminiのMatt MountainがSTScIに9月に異動。 2-3. JASMINE(郷田) 資料(3−8)をもとに主に以下のような報告が行われた。 ○4月から小林行泰氏が、JASMINE検討室の常任メンバーになった。 ○ビーム混合鏡の角度変動を高精度で測定するレーザー干渉計型モニターの   実験を開始。 ○Nano-JASMINEのシステム検討が、東大中須賀研究所で今年度から本格化する。  望遠鏡の製作、機能試験も進行中。  2-4. カセグレンシミュレータについて(小林) 開発実験センター改組準備委員会でカセグレンシミュレータに関して検討さ れた事項について、資料(3−10)をもとに主に以下のような報告が行われた。 ○すばる第一期装置、装置自動交換装置の開発後は、MAGNUMプロジェクトで 使っただけで利用されていないのが実情。撤去して跡地を利用した方が有益である ○撤去費用は300万円。 ○利用したいところは連絡を欲しい。なければ、廃棄を含めた対策を行う。 2-5. その他 (1)公表されたJAXAの長期ビジョンに関して中川委員から報告が行われた。 (2)光赤外将来計画検討会が作成した報告書が完成し、まもなく配布予定で ある旨が土居委員より報告された。また、配布先の希望がある場合は、連絡が 欲しい旨の要望も出された。 以上。 配布資料一覧 3−1 第2回光赤外専門委員会議事録 3−2 小委員会委員の選出方法案 3−3 すばる小委員会名簿 3−4 広島大学と国立天文台が取り交わす協定書案 3−5 重力波計画について 3−6 第1回すばる小委員会議事録 3−7 第2回すばる小委員会議事録 3−8 JASMINE計画に関しての報告 3−9 UK/UKIRTの利用状況 3−10 カセグレインシミュレータについて 3−11 MIRA