第11回すばる小委員会議事録 日時:2006年5月30日 11:00〜15:20 場所:国立天文台 解析棟2F TV会議室 出席者:有本信雄 太田耕司 千葉柾司 土居守 高田唯史 小林尚人(三鷹) 山田亨(ハワイ)      林正彦(レーザーガイド星運用及びMPIAの観測時間要求の項のみ参加) 書記:吉田千枝 ●本日の委員会の性格について 2006年度光赤外専門委員会の発足が遅れているため、その下部委員会に位置づけ られているすばる小委員会も新年度の発足が遅れている。 しかし遅滞なく議論しなければならない事項が多いので、とりあえず2005年度 すばる小委員会のメンバーで委員会を開催した。新委員会発足の前に実務を 担当するという位置づけである。 ●2005年度SAC報告書の公開について 概要と目次の英訳を付加してすばるの公式ウェブページに置き、トップページで アナウンスする。 報告書のURLをsubaru-users, hilo-office, 光天連、理論懇の各MLに通知する。 ハワイ観測所長と台長には、全議事録と共に報告書の紙版を有本委員長から手渡す。 ●次期委員候補者について 任期は4月1日に遡って2年となる予定である。 内部委員、外部委員が半々になるようにし、全体で12名程度が機動力があっていいだ ろう。ユーザーの意見を反映させるためにも、各分野、各大学からなるべく偏りなく 委員を選出する。以上の観点から、2005年度すばる小委員会としては13名を2006年度 すばる小委員会メンバー候補として光赤外専門委員会に推薦する。 委員会活動の継続性を維持するために昨年度の委員の多くを留任させたい旨を委員長から 伝えたい。 ●レーザーガイド星運用方針に関するKecK提案について(早野裕氏) ハワイ観測所早野氏よりTV会議でこれまでの経緯についての説明があった。 マウナケア山頂でのレーザーガイド星補償光学系(LGSAO)の運用方針については、 KecK, Gemini, Subaru, UH, CFHTが集まって技術ワーキンググループを作り、 検討してきた。2005年まではKecKIIだけがレーザーを使用していたため、 「レーザーは他の観測を妨げてはならない」という方針で問題なかったが、 2006年は多くのレーザー照射が行われる予定であり、方針の変更を迫られている。 KecKからは「レーザーガイド星を使用するしないに関わらず、最初に観測ターゲットに 向けた望遠鏡に優先権がある」という新運用方針の提案があった。 このいわば「早い者勝ち」方式はすばるのS-CamとFOCASには多大な影響があるので、 すばるとしては特例的な扱いを要求する必要がある。 ハワイ観測所部門長会議及びAOグループ内での検討を経て、すばるとしては下記の ような対応が妥当ではないかと思われるがSACで議論してもらいたい。 1 すばるでもレーザーガイド星の運用が近いうちに始まろうとしているので、  レーザーガイド星を最大限に利用するための運用方針変更には基本的に賛成である。 2 すばるではクラシカル観測を実施しており、当初予定していた観測を中止し  バックアップ天体だけを観測しなければならない事態を観測者に理解してもらうことは  困難である。 3 S-CamとFOCASについては影響が大きい。クラシカル観測のすばるでは事前に  観測スケジュールが決まるので、S-Cam,FOCASの観測日とレーザー使用が重ならない  ようにするなどの配慮をお願いしたい。 4 レーザーの波長(589nm付近)からはずれた波長の観測においても、サイエンスカメラ  及びオートガイダーカメラへのレーザー光の影響について検討することが必要である。 C:短期的には上記の4点でよいと思うが、長期的にはすばるの運用をもっとフレキシブル  に変えていく必要があるだろう。キュー観測への移行が必要になるのではないか? C:すばるユーザーはあまりキュー観測を希望していないという現実がある。 C:すばるが要求する特例は、他の望遠鏡にとってかなりに負担になるのではないか? 所長:S-Camはすばるの主力装置であり、将来望遠鏡の相互利用・時間交換が進んでも、   S-Camの機能を他の望遠鏡で代替することはできない。 Q:他の望遠鏡の対応はどうか? A:Keckの提案に対して、CFHT,Geminiは推進派でUHは慎重派のようだ。  CFHTはサーベイが多く、Geminiはキュー観測を実施しているせいだろう。  クラシカル観測で運用しているKecKでは、LGSAOを使う観測にはバックアップ天体を  多数準備して対応している。Keck以外のLGSAOを使った観測はまだあまりないので、  Keck自身のユーザーの将来の反応はまだはっきりしない。  とりあえず試用期間を設けてみるという案もある。  暗夜をS-Camとレーザーガイド星観測で半分ずつ分けるという案も考えられる。 C:当面はS-CamとFOCASについての特例措置を要求する一方で、将来の運用体制を  考えていく必要がある。 所長:上記の1-4の文案をさらに観測所内で整備し、SAC委員に回覧して意見をもらった    上で6月中旬のレーザーガイド星WGに提案することにする。 ●MPIAからの観測時間要求について(林所長) AOの赤外波面センサーを共同開発しているMPIAがGTがほしいと言っている。 MPIAは共同開発のために5000万円程度の寄与をする予定なので、それに見合う 観測時間を供与したい。所長裁量時間の国際共同枠から出せる範囲内なので、 共同利用には影響しない。 Q:一晩1000万として5夜程度か? A:そうだ。 これは2005年度第10回すばる小委員会でもすでに議論しており、SACとして 承認する。 ●WFMOSの資金状況について補足(林所長) Hyper-Scamの資金獲得のために前所長が大型の科研費を申請中で、その結果は 7月に出る。WFMOS計画のためにはHyper-Scamの製作資金が必要だが、科研費が 通ったとしてもGemini側が希望するスケジュールの実現は難しそうだ。 WFMOS計画は保留の状態で、Geminiの資金でWFMOSを作ることは困難な状況。 ただ国際的なコンソーシアムをやることには意味がある。 ●2006年度すばる小委員会の活動について(委員長) 2006年度は年4回程度の開催としたい。 すばるの知名度も上がり、物理と天文を一緒にやる機運もでてきたようだ。 次期観測装置についての議論は是非気を抜かずに継続したい。 夏にSACシンポをやって、すばるでどういうサイエンスができるかを 公募して議論したい。 C:夏の開催では今から十分な準備ができない。 C:9月の学会後に岡山のUMやすばるの解析講習会が計画されているので、  10月の第1週あたりがよいのでは? C:前回のユーザーズミーティングではビジネスセッションが多かったので、  今度はサイエンスセッションを十分にやりたい。 C:2005年度SAC報告書で取り上げた5種の次期観測装置(*注)について  サイエンスの議論を深めたい。 *注 広視野可視撮像装置(Hyper-Scam) 広視野可視多天体分光装置      広視野近赤外撮像装置      中間赤外撮像分光装置      AO用多天体+面分光装置       C:SACが各装置についてコアメンバーを委嘱してシンポの準備をしたい。 C:この装置を自分がやろうという人がいないと、装置の数は自然に絞られて  くるだろう。 Q:今度のシンポは次期観測装置のCall for proposalsという性格に  なるのか? A:概念設計案が出てくるのもよいと思うが、全ての装置についてそれを要求する  ものではない。コミュニティと一緒にR&Dをやるという姿勢で推進したい。 C:シンポは「すばる次世代観測装置ワークショップ」と銘打ってはどうか? C:WFMOSについてもメリット・デメリットを明確にしておきたい。 C:WFMOSについては二つのグループが動いており、一方は計画書をまとめる方向  で動いている。 C:あらゆる分野でコンソーシアムの時代なので、チームリーダーになる  人材を育成する必要がある。 ●すばる戦略枠の創設について 基本的には「観測所プロジェクト」の拡大版(観測所外からも応募可)であり、 是非実現したい。 間もなく立ち上がるFMOSやHiCIAOについては差し迫った検討課題であり、 AO188やS-Camのアップグレード後の対応も必要になる。 観測時間枠を観測所が用意して、大小のチームがそれを使う形だが、 観測時間を与えるだけでなく観測成果のアウトプットを義務づけ、 論文出版までを監視することにする。  現在のセメスタ毎の公募に縛られない点がポイントである。 C:intensiveと戦略枠の違いをはっきりさせる必要がある。 -->戦略枠の募集は共同利用公募とは別に行う。   例えば、FMOSに3年間で50夜の枠を観測所が設け、公募によって   大小のプログラムをアサインするなどのやり方が考えられる。   科研費の特定領域のような考え方だ(特別推進や基盤研究の集積とは   異質のもの。インテンシブ枠は特別推進に相当すると言える)。 ●Geminiとの時間交換について(TAC委員長) S06B期からGeminiとの時間交換をすることになった。 S06BではGeminiに6件の応募があったが、もう少し応募数が増えてほしい。 共同利用担当:NIFSが動き出せば応募が増加すると思われる。        Geminiからは8件の応募があり、時間交換分の公募倍率は同等の        2倍程度だった。 C:S07A期の応募状況も見た上で、ユーザーズミーティングでの宣伝等を  考えてはどうか? ●次回すばる小委員会 今年度の光赤外専門委員会が発足すれば、その直後に召集される予定。 本年度のSACの活動が停滞しては困るので、早急に光赤外専門委員会の 開催を世話人に要求する。