光赤天連SPICAタスクフォース 議事録

開催日時 2008年12月17日 10:00-13:00
場所     宇宙研

参加者 中川 かたざ 塩谷 和田 松原 土井 河野 齋藤 今西 
       泉浦 川良 大薮 (書記)(宇宙研)
       市川 (東北大学)
       田村 (天文台)
       左近、尾中 (東京大学)
       高見 (ASIAA)
欠席   山下 渡部

○報告事項(松原)
・SPICAミッション要求書
「SPICAのミッション目的・目標・成功基準」にSPICAの目標を記している。
タスクフォースの皆様の意見を頂き、アップデートしていきたい。

C. タスクフォースとしては、これの定期的な見直しに協力していく。
   落ちがないか、古くなっていないかという確認を常に進めていく。
Q. キープロジェクト(Legacy Science)とこの文書の関係は。
A.  キープロジェクトと思いたい。

・SAFARIコンソーシアム報告(土井)
2008年12月初旬にベルギーで会合が行われた。
検出器が4つ検討されている。一つ(フォトコン)は日本側から。
SAFARI側が(ESA方向へ示している)目標と(日本の)SPICA側の目標を共通化する
のがAIとなっている。
Cosimic Visionの2009年のDown Selectionに向けての詳細なメカニカルの検討が
進んでいる。
波長分解能は、重量制限から10,000から2,000あたりへのダウングレードを検討。
サイエンスの検討もヨーロッパ側で進められている。
日本側もサイエンスを検討するチームを立ち上げつつある。
来年9月のDown Selectionに向けて、6-7月に話をまとめる予定。

ヨーロッパ側のサイエンス検討会は、各国で進められている。
2008年11月にスペインで、土井さんがスペインの天文学者と意見を交換してきた。
2009年1月にフランスでこのような会合が行われる。

Q. ハードウェアでの参加は?
A. 検出器の候補の一つ、フォトコンダクターが日本の参加。

Q. 検出器の選択のタイムリミットは?
A. ヨーロッパ側は、ダウンセレクションがある半年後には決めたいと
思っているが、まだ難しいだろうという認識が広がっている。
A. 2011年までに決めたい。

Q 波長分解能は、何が決める?
A. 基線長(分光器の稼働長)が決める。

Q. 検出器感度と視野は、Herschelとどう違う?
A. 検出器感度は二桁改善  と 視野はPACSはlong slit+image slicerなので、
並べては議論しにくい。

Q. 他のCosimic Visionを少し説明して欲しい。
A. 
L-size
  Laplace 木星
  Tandem 土星(惑星の選択は2009年にされるため、2009年にLaplaceとTandem
  のどちらか一方のみになる)
  Lisa  重力波
  IXO   X線天文衛星(欧州のZEUSと米国のConstellation-Xがまとまったらしい)
        2020年打ち上げは不可能なので、今回のselectionからは外れる?
M-size
  Euclid ダークマター
  Plato 系外惑星(トランジット法。ケプラーと似ている)
  Marco-Polo 小惑星のサンプルリターン、日本との共同「はやぶさMk2」
  Cross-Scale プラズマ 編隊飛行 日本との共同
  Solar Orbiter 太陽へ飛んでいく衛星
  SPICA 日本との共同

Q. 日本との共同ミッションが3個あるが、日本側での順位付けは?
A. 日本側では声明は出していない。

Q. SAFARIコンソーシアムは、中間赤外線をどう考えているのか?
A. SAFARIの範囲内での議論を進めているが、中間赤外線が必要に
なるサイエンスもある。

Q. 装置ごとにサイエンスコンソーシアムを持つのか?他の焦点面の装置に
ついて。
A. 装置ごとに作りたいと考えている。
Q. 装置チームというのは、Legacyサイエンスまで含めてのチームであるべきだ。
C.  装置ごとにサイエンスチームを作っても、どの装置も事実上同じメンバー
になるのでは。

C. SPICA Stairing Comitteeとタスクフォースとサイエンスコンソーシアムとの関
係をプロジェクト側で少しまとめる。タスクフォースの全体の位置づけを整理す
る。
C. タスクフォースの一番重要な点は、コミュニティーとのパイプ。
情報の公開。コミュニティーの総意を吸い上げる。サイエンスは、コンソーシア
ムが進めるべきであろう。

○議論 中間赤外線カメラ
・プロジェクト側の検討状況(和田)
4チャンネルだったのが、2チャンネルで検討している。

仕様
  反射光学系で検討することで、2チャンネル化ができるようになった。
  ピクセルサイズが10ミクロンでナイキスト。
  10ミクロンより長い方では、オーバーサンプリングだが、広帯域フィルターだと
  背景放射リミット。
  10ミクロンより短い方が、アンダーサンプル。解像度、測光精度に影響があるだ
  ろう。
  宇宙線の影響も問題になるかも。
  スリットマスクも置ける。出し入れできる。
  最初の案より、検出器を減らしたことにより常時ONの可能性も。-> SAFARIと要
  相談。
  2mという光路が必要なために、ボリュームが問題になるかも。
オプション
  低分散グリズム分光機能をつけられる。
  短いチャンネルを、検出器をモザイク化して、6ミクロンナイキストサンプルで
  きる。
  ダイクロイックミラーができると、マルチバンド化できて、観測効率が上げられる。
  現在の検出器は〜38ミクロンまでであるが、検出器メーカに、波長の長い(50ミ
  クロンまで)検出器の開発の可能性を検討してもらっている。現在のデザイン
  は、反射系なので、検出器を導入するだけで拡張が可能。

Q. 現在の光学系のデザインでモザイク化は簡単か?
A. 簡単である。ただモザイク化は、検出器の隙間が問題となるであろう。

Q. ダイクロイックミラーは、光学系では入るのか?
A. 入れるところはある。

Q. ミラーだとトレランスが厳しくなるのでは?
A. 波長が長いこともあり、さほど厳しくないだろう。
C. 一般論では反射系の方が厳しいはずであるが、レンズの設計や支持、コー
ティング、材質の屈折率データの不定性等を総合的に考えると、反射系の方が楽
であるのではないだろうか。

Q. ダイクロイックでスループットは?
A. 少しは悪くなるが、それでも同時に取れるというゲインは大きい。
C. ダイクロイックは、開発要素である。

Q. ダイクロイックがない場合はフィルターでバンドをかえるのか?
A. そうだ。

Q. グリズムの分散は?
A. グリズムの分散は、100-200あたりを考えている。

Q. 50ミクロンへの延長で、Cosimic-Rayの影響はどうなる?
Spitzer IRSのLLは、結構たいへんだ。
A. Cosimic Rayの影響は、検出器の空乏層の厚み、ピクセルサイズなどで
決まる。Spitzer IRSで影響が大きいのは、後の処理の問題では?

Q. Re-imagingがないと、分光機能が大幅に失われると言うことはどういう
かとか?
A. 「あかり」みたいにマスクの角を付ける分光になる。

C. 短い方を、視野を絞り、ナイキストサンプルするという考え方がある。
C. 短い波長での回折イメージは、コロナグラフの撮像モードを使える。

Q. Second Pupil 拡大レンズを入れるとかは?
A. 可能性があるので、ニーズを提案して欲しい

Q. JWSTと感度が逆転する波長は?
A. 15ミクロンぐらいと言われている。

Q. MIRIの視野は?
A. 1分ちょい。

・JWSTのMIRIとの比較(和田)
12ミクロン以下は、黄道光リミット。ここは、JWST優勢。
12-23ミクロンは、サンシールドの散乱光。実際の影響は打ち上がってみないと
わからない。 
JWSTは筒なし、SPICAは筒有り。ここが大きな違い。
23ミクロン以上、望遠鏡の放射リミット。ここは、冷却望遠鏡のSPICAが強い。

JWSTフィルターのセット
  R〜5程度と広帯域と狭帯域もある。コロナグラフ関連のフィルター有り。
JWSTの分光
  イメージスライサー R〜3000 分光
  または短いスリットでの分光
SPICA 中間赤外線カメラでは、低分散分光がLong Slitできる。

Q. Long Slit分光マッピングができる?
A. できる。

Q. Micro Shutterは?JWSTは近赤で使う。
A. 現状としては、検討していない。

Q. 姿勢は大丈夫か?
A. 衛星自体に要求を出し検討している。

Q. SPICAに筒があり迷光に強いことは、バックグラウンドの絶対測光が強み
になるのでは?
A. そうなるだろう。

Q. 15ミクロンでのJWSTとどれぐらい勝てるのか?
A. サーベイ速度と言うことでは、口径が小さいことで感度を失っているが視野
分のゲインが大きいので勝てる。
C. 視野が約30倍広いので、感度が30倍悪くても勝負になる。
C. コンフュージョンが効いてくるから、そう簡単な計算ではないだろう。
A. SPICAではコンフュージョンでの観測が可能となる。コンフュージョンを見積も
る必要がある。

・コロナグラフ(塩谷)
2種類のコロナグラフ バイナリーマスク、 PIAA
高サンプルカメラともなる。

載らないと考えられている機能
  イメージローテーター
  IFU
  マルチチャンネル化

Q. いったいSPICAに何キロ装置が乗せられるのか?
A. 合計 150kg
        Optical Bench 40kg
        SAFARI マージン含めて、50kg
        残り60kgを、中間赤外線装置が使える
  現状の案では、
        コロナグラフ 50kg
        中間赤外線カメラ 50kg
        中分散(R=1000)分光器 50kg
        高分散(R=30000)分光器 50kg 

C. 日本側の装置の見積もりは、SAFARIに大きく遅れている。経験則のど
んぶり勘定である。 
C. リソースが厳しい。コロナグラフは、やはりオプションの一つと考えたい。
オプションで50kgと言われても厳しい。
C. コロナグラフもまだ戦いの場に残っているべき物である。

Q. この装置の競争はいつまでにやればいい。
A. 来年9月のSRRできめないといけない。

C. コロナグラフは、重要だと考える。ダウングレードしてでも載せるべき
では?
C. サイエンスができる物をなんとか載せるというのは、もちろん賛成だ。
C. SPICAがコロナグラフの技術試験という考え方もあるのでは。
A. SPICAには、試験の機能を載せる余裕がないだろう。
C. SPICAでの技術試験という考え方は、良くないだろう。やめるべきだ。成
果を出さないと次はない。
C. 中間赤外線カメラにコロナグラフをのせるという解はある。しかし中
間赤外線カメラの短い波長での視野が狭くなるとかの副作用もある。 また10^5
のコントラストの達成が厳しく、JWSTに対する利点がなくなる。単なる後追いに
なってしまう。
C. 視野が狭くなるという副作用は、短い側でOptimize Sampleができるとい
う考え方もできる。

C. コロナグラフのデグレードは、MIRIとだぶるので、ぎりぎりまで今のレ
ベルで検討したい。

中間赤外線カメラにもどって、

Q. ダイクロイックでチャンネルを増やしても、一部をレンズ系にすると、
重量の増加を押さえられるのでは?
A. 可能である。

Q. Si:Sbですべての中間赤外線帯をカバーすれば、ダイクロイックで分けず
に、一つの光学系になるのでは?
A. 短い波長でSi:Asより、感度が半分となるので損する。

Q. 広視野Line Mappingしたい。例えば水素分子。R〜30の狭帯域フィルターは?
A. ある程度の狭帯域はできるので、開発を進めている。R〜10ぐらいなら。

Q. どれぐらいのRが必要か?
A. R〜35で、SpitzerのIRSと同じぐらいの感度だと考える。R〜20でもいい。
C. IRSの感度でマッピングできる物を人類は持っていない。
Q. 京大の長田さんの17micronカメラは感度的には?
C. TMTでR=10000なら、感度的にSpitzer IRSと同程度に達する。
C. 等価幅の問題だと思うが、どれくらいのRで本当に充分なのか、
Requirementをまとめて欲しい。
Q. 28ミクロンの水素輝線で本当に面白いのは、fluorescenceではなく、
温度で衝突励起されているものであろう。その場合、連続線も強いので、Rが小
さいと問題あるのでは?

C. 出てきている要望をリストしてみる。できることできないことを、クリ
アにする。

Q. 従来よりコンフュージョンが改善するので、銀河面サーベイをしたい。
サチュレーションリミットを出して欲しい。
A. 重要であろう。見積もる。(A/I)

Q. コロナグラフでもサチュレーションリミットは?
A. かなり明るくても大丈夫にするつもりだ。見積もりはする。(A/I)

C. 中間赤外線カメラのソースコンフュージョン リミットを、見積もる。 (A/I)
C. その見積もり自身がサイエンスである。是非既存の知識に縛られないよ
うにしておくべきであろう。装置のデザインにも、予想を超えてソースが、検出
されることもあることを加味しておくべきだ。やはり空間のサンプリングは
Optimize Sampleであるべきでは。
C. コンフュージョンの見積もりはタスクフォースの方から然るべき人に依
頼する。

○次回に向けて、
・長波長中分散分光器の検討(一月の中旬をめどに、プロジェクトから提案す
る。A/I)
・高分散分光器(小林尚人さんを招聘する。)

(市川) 中間赤外線カメラの質問・要求を思いつき次第、出して下さい。
       フィルター・グリズムの数 (ベースライン 〜 10/Channel)
       狭帯域フィルター
       マイクロシャッターは
       短波長でナイキストサンプルを目指すか?
       ダイクロイックミラーの作成はfeasibleか?
       サチュレーションリミット
       10-20ミクロンでのsource confusionは?

Q. チューナブルフィルター?
A. これは厳しいだろう。

Q. 広帯域フィルターは何枚考えているのか?
A. 検討する。例えばSED Fittingにどれぐらい必要か考えよう。
フィルターホイールの使い方をタスクフォースから誰かに依頼してもらう。

次回、2月2日から13日の間あたりで日程調整。1日会議。
次回の主なアジェンダ
  タスクフォースから、科学的観点に基付き装置の各種機能について提言を
  していただく。