装置責任者 | : | 高見英樹 |
サポートサイエンティスト | : | 大屋真 |
チームメンバー名(開発開始からのメンバーで、レーザーガイド星AOのメンバーはここでは含まない) | ||
: | 高見英樹、高遠徳尚、家正則、早野裕、大屋真、神澤富雄、鎌田有紀子、Wolfgang Gaessler、David Saint-Jacques、中島浩二、大坪政司、後藤美和、美濃和陽典、Tom Kane |
band | Strehl ratio |
J | 0.37 |
H | 0.55 |
K | 0.71 |
L | 0.86 |
band | magnitude |
R | 18 |
wavelength [μm] | throughput |
1 - 5 | 94% |
ファーストライト | 2000年12月 |
共同利用開始 | 2003年4月 |
制作費 | ||
1997-9年 | 国債 24300千円 | |
以下保守経費 | ||
1999年 | 7000千円 | |
2000年 | 9000千円 | |
2001年 | 23130千円 | |
2002年 | 8600千円 |
band | Strehl ratio |
J | 0.05 |
H | 0.17 |
K | 0.3 |
L' | 0.5 |
当初目標にしていた値は、基にしていたシミュレーションの結果 が良すぎていたようである。理由としては、風速や高次の大気ゆらぎ成分が 少なめに見積もられていた等が挙げられる。 現在設計中の新しいAOのPDR資料(2002年5月)中で 現行の36素子AOの性能に関しても 改めてシミュレーションした結果を行ったところ ストレール比が、J:0.11, H:0.28, K:0.48 (seeing=0.45"@R; 新AOのPDR資料2002) であった。但し、これでも未だシミュレーションと実際の性能の間には差があり、 今後もTip/tiltとDMの制御の切り分け等の性能向上の余地があると考えられる。
band | magnitude |
R | 18 |
2)AOのTip/tiltを利用したディザリングや位置の微調整
望遠鏡を動かしてディザリングすると20秒弱のオーバーヘッドが掛かるが、
AOのTip/tiltを用いることで3"以内であれば、各点3秒程度のオーバーヘッドで
効率的にディザリングすることが可能である。
また、0.1ピクセル単位で星像位置の微調整を行うことができる。
3)非恒星天体の観測
例えば、太陽系内天体を追尾して観測する場合に恒星をガイド星として用いると、
短時間にAO波面の視野(直径5")から出ていってしまう。
また、例え視野内に入っていても恒星の位置が移動するとそれを補正するように
AOが働くので、肝心の観測している太陽系内天体が移動方向に延びてしまう。
特に観測対象が暗い場合には、この影響は無視できない。
そこで、あらかじめ計算された方向に定期的にガイド星捕捉機構を動かすことで、
太陽系内天体を観測装置検出器上で一定の位置にとどめておくことが
できるようにしてある。
4)赤外背景放射パターン対策
AOのTip/tilt鏡は瞳位置に無いため、
動作させると観測装置が望遠鏡の別の部分を見ることになる。
その結果、特にKバンドより長い波長域では
非一様な強い背景放射のパターンが出て
差し引いてもきれいにならない。
この影響を抑えるため
AOのTip/tiltの動作を止めて観測することができるようにしてあるが、
この場合望遠鏡の追尾誤差が
可変形鏡のTip/tiltに蓄積されていくという問題がある。
そこで、この可変形鏡に蓄積されたTip/tiltを
SOSSからのコマンドで即座にステータスとして返せるようにし、
望遠鏡の追尾誤差を補正できるようにしてある。
5)波面センサ内の迷光対策
これまでのところ太陽系惑星の近傍の衛星をAOのガイド星に
すると衛星自体は十分な明るさがあるにもかかわらず
惑星からの光に影響されてAOのループを閉じることができなかった。
現在いろいろと対策を講じているところである。
当初計画にあり且つ現在でも開発すべきであると考えられる項目としては、
1)望遠鏡副鏡によるTip/tilt補正
「赤外背景放射パターン対策」として非常に重要である。
AOのTip/tiltの代わりに望遠鏡副鏡のTip/tiltを用いれば、
問題となっているパターンは出ないことが確認されている。
次期AOでも、Tip/tiltの補正をAOと望遠鏡で分担することが
できるので、現AOの段階から是非とも開発をすすめていきたい。
2)シーイング条件の診断機能
AOの性能は観測する時のシーイングの条件に大きく左右されるので、
補正を行うのと同時にリアルタイムでそのデータを保存することが重要である。
また、そのデータを即時に解析して現在のシーイング条件の要約を
観測者に伝えるようにすることも大切である。
3)パラメータの自動決定
AOの制御のパラメータはガイド星の明るさやシーイング条件で変化する。
現在、これらの調整は人間が経験に基づいて行っているが、
本来、波面センサからの出力に基づいて決定すべきである。
4)ガイド星の検索ソフトウェア
当初計画にある様に望遠鏡AG用の星を選択するのと同じ操作性を持ち、
観測準備段階でも利用可能であることが望ましい。
ただ、実際の観測ではAOの波面センサ内のCCDの視野よりも
観測装置の視野とデータベースの出力が連動する機能も
不可欠であろう。
5)AOを使った観測手順の自動化
当初計画では「観測者にできるだけAOの存在を意識させないこと」が
目標に掲げられているが、現状では達成できているとは言いがたい。
上記の2)〜4)のソフトが完成し、SOSSの中にうまく組み込めれば
かなり目標に近付くことができるであろう。
これらの機能は得られる性能の向上や観測の効率化に非常に重要であるが、 現在までのところ実現されていない。 原因はマンパワー不足で、これまで全くの手付かず状態であった。 今年度から1)と2)を実現するために新たに専任のポスドク一人が グループに加わり、コーディングをソフトウェアエンジニアの一人 (50%をこの仕事に使う)が担当することになっており、 これらの機能のを2003年度中に完成させる予定である。
その他、現AOで実現するよりも次期AO計画で検討するべき項目がいくつかある。 レーザーガイド星はこの計画の中心部分となっている。 これらの計画の中では大気分散補正光学系の検討も行っている。 赤外波面センサについても機械・光学設計では 取り付ける余地を残しておくべきだと考えている。
2)DLA天体の同定
観測対象が>16等のため、現在の性能では十分な空間分解能が得られない。
3)DLA天体からのHe吸収の検出
同上
2)曲率検出式波面センサ
検出器としてフォトンカウンティングモジュールを使っている。
主な特徴は、暗いガイド星まで補正ができることである。
それ故、QSOなどの系外銀河の観測に威力を発揮する。
現在、曲率センサを用いているAOは、
すばるとVLTの干渉計用クーデ焦点である
(近いうちにカセグレン焦点でも曲率センサを用いたAOがつく)。
2002年度
当該装置利用プログラム件数(GTプログラムを含む) | : | 28 |
観測総夜数(GTプログラムを含む) | : | 78 |
当該装置の利用経験者数 | : | 50 |
注:各装置ごとに、サイエンス時間、エンジニアリング時間をそれぞれ一プログラムと数えてある。
計画の概要
1)多素子化
現行の補償光学系は補正素子数36素子のバイモルフ鏡と同じ素子数の波面曲率センサーを持つシステムである。現在のシステムの問題は、補正性能がその素子数で制限されており、Kバンド(波長2.2ミクロン)での性能は0.4秒のシーイング下でストレール比=0.35(ストレール比は星の中心強度の回折限界の時との比)と、回折限界分解能が得られる性能となっているが、より短い波長J(1.25)、H(1.65ミクロン)バンドでは、星像の改善度はあるが、回折限界分解能を得ることはできていない。これを改善するために、補正素子数を188素子に増やす。これによって、Kバンドでは、ストレール比0.8を達成し、またJ、Hバンドでも回折限界分解能が定常的に得られる。
基本仕様
可変形鏡 | 188素子バイモルフ鏡 |
波面センサ | 188素子波面曲率センサ |
目標補償性能 | ストレール0.8Kバンド,@0.5秒角 |
光学系 | ビーム径90mm,焦点距離1100mm |
制御帯域 | >100Hz |
レーザー | 出力4W(連続波)10等級相当 |
2)レーザーガイド星化
現行システムのもう1つの問題点は、観測したい天体の近くに明るいガイド星が必要なために、観測できる天域が約1%に限られることである。波長589nmのレーザーを高度90kmにあるナトリウム原子層に照射すると、ナトリウム原子を励起して、光らせることができる。これを人工のガイド星として波面測定をすることによって、ほぼ任意の方向の天体を観測することができるようになる。このためのレーザーとしては、出力4Wの色素レーザー(より進んだ方式として同時に全固体和周波レーザーも)を開発中である。これをナスミス焦点付近設置し、光ファイバーを通じて、すばる望遠鏡副鏡の裏がわに取り付けたレーザー送信望遠鏡を使って空に照射する。これによって約10等星の人工のガイド星を作ることができる。