CIAO Coronagraphic Imager with Adaptive Optics
装置責任者 | : | 田村 元秀(国立天文台・光学赤外線天文学観測システム研究系) |
サポートサイエンティスト | : | 村川 幸史(国立天文台・ハワイ観測所) |
チームメンバー名(機関・役割分担) | ||
スタッフ | : | 周藤 浩士(国立天文台・ハワイ観測所:エンジニアリング責任者、観測) |
林左 絵子(国立天文台・ハワイ観測所:データ解析、望遠鏡IF、観測) | ||
海部 宣男(国立天文台:初期装置責任者、観測) | ||
伊藤 洋一(神戸大学:前ソフトウエア責任者、データ解析、観測) | ||
高見 英樹(国立天文台・ハワイ観測所:補償光学IF) | ||
高遠 徳尚(国立天文台・ハワイ観測所:シミュレーション) | ||
家 正則(国立天文台・光赤外系:コロナグラフ分光モード検討) | ||
研究員等 | : | 海老塚 昇(理研:光学系、グリズム開発) |
大朝 由美子(宇宙開発事業団:データ解析、観測) | ||
中島 康(名古屋大学:観測) | ||
大学院生 | : | 深川 美里(東京大学:偏光器開発、データ解析、観測) |
直井 隆弘(東京大学:観測) | ||
佐藤 将史(東京大学:データ解析、観測) | ||
眞山 聡(早稲田大学:データ解析、観測) | ||
技術関連者 | : | 武山 則英(光学系) |
完成時期:2000 年2 月10 日(完成の定義が人によって違うと思いますが、いちおう、ファーストライトでカメラとしては完成したとしました)
公開時期:AO なしで公開S01A から
AO ありで公開S02A から
予算内訳
以下は主に国庫債務負担行為分による支払いである。なお検出器は観測所からの支給であり、予算には含まれていない。
品目 | 経費(千円) | 内訳 |
真空冷却系 | 84,490 | クライオスタット、検査、コンテナ |
試験クライオスタット | 5,500 | 光学系・駆動系部分のみの試験装置、現在も活用中 |
光学系・駆動系 | 36,059 | 主にIRL より |
アレイエレクトロニクス | 37,800 | 主にMKI より |
国内購入部品 | 19,474 | マスク、ストップの光学系・蒸着、WS |
出向費・輸送費・管理費 | 19,226 | |
合計 | 202,549 |
関係者が、大型装置製作を比較的少ないマンパワーで製作した最初の経験であり、また、大学と異なり毎年新しい院生が参加するような体制は取れなかったこともあり、割高になったという反省がある。
今後必要な予算(千円)
新規 Wollaston prism の製作 | 2,000 |
新規 grism の製作 | 4,000 |
新規補償光学装置への対応 | TBD |
検出器 | Aladdin II 1024x1024 InSb (0.9-5.5μm) |
観測用ピクセル スケール及び視野 | HRM (11.5 mas/pix, 11.7 arcsec), MRM (21.7 mas/pix, 22.2 arcsec) |
リアルタイム光軸調整 | Pupil Imaging Mode |
フィルター | ブロードバンド(z,J,H,K,Ks,L',M';Consortium仕様) ナローバンド([FeII], CH4, Hcont, H2(1-0), H2(2-1), Brγ,Kcont) ND filter |
コロナグラフ | 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.8, 1.0, 1.5, 2.0, 3.0, 4.0"直径 円形遮蔽マスク、透過マスク(1%) |
ストップ | 円形3種(100%, 90%, 80%) スパイダーパターン有り 1種 graded edge 1種 |
スループット | 〜15%(検出器の場所による) |
偏光 | ワイヤーグリッド、ウォラストンプリズム+アクロマート波長板 |
分光 | J,H,Kバンド (R~150-600, 0.8"-0.2" slit width) |
共同利用 | S02A より |
直接撮像およびコロナグラフ撮像については上記スペックを満たしている。偏光については、ウォラストンプリズムのためのスリット幅が小さく、現在はワイヤーグリッドによる観測を推奨している。分光についてはマスクつきの分光ができることが特色であるが、性能試験が不十分なため共同利用には供していない。
共同利用には、S02A 期からAO 無しで、S02B 期からAO 有り、かつ、一部機能制限有りで利用可能となっている。S03A からは特に大きな機能制限無しの共同利用に供している。
日時 | TN | BN | 備考 |
機能試験観測 | |||
2000/02/10-15 | 6 | 1 | ファーストライト |
2000/10/06-08 | 3 | 1 | 改修後 |
2001/01/16-17 | 2 | 0 | AOカップリングファーストライト |
2001/07/07-08 | 2 | 0 | シラス |
2002/07/15 | 1 | 0 | |
2002/08/02 | 0.5 | 0 | シラス |
2002/08/04 | 1 | 0? | |
合計 | 15.5 | 2? | |
性能試験観測 | |||
2001/05/15 | 3 | 2 | シラス |
2001/11/24-29 | 5 | 3 | 11/28は停電(補償分なので除く)、シラス |
2001/12/05-06 | 2 | 0 | COMICSランのカバー、シラス |
2002/01/16-19 | 4 | 2 | 冷凍機トラブル、降雪、シーイング1秒台 |
2002/02/19-21 | 3 | 1 | 機能試験の振替え前倒し、シーイング変化大 |
2003/01/03-05 | 3 | 0 | |
合計 | 20 | 8 |
ここで、TN=夜数、BN=悪天候のため、それぞれ機能試験夜あるいは性能試験夜にそれぞれ意味のある技術あるいは科学データが全く取得できなかった夜数である。最小単位は0.5 夜で、数時間の望遠鏡トラブル等はカウントしていない。これから明らかなように、「性能」試験観測時には約半分は「何もできなかった」ことになる。これは、性能試験観測をなるべく早く消化することを要望されていたことと、それに関連して2001 期の(特に冬の)天気が非常に悪かったためである。
性能試験でデータの取れた(これは必ずしも晴れたことを意味しないが単純に)夜数12夜(=20 夜-8 夜)を、開発にメインに携わったスタッフ5人で割ると、一人当たり2.4 夜しか無い。これは、装置開発に5 年以上をかけた対価としてはあまりにも厳しいのではないだろうか。
検出器タイプ | Aladdin II 1024x1024 InSb array |
波長範囲 | λλ 0.9 to 5.5 mm |
ピクセルサイズ | 27 μm x 27 μm |
作動温度 | 32.5 K |
バイアス | -500 mV |
ゲイン | 7.1 e-/ADU |
暗電流 | <0.3 e-/s |
読出しノイズ | 25 e- rms |
線形性 | 49,000 e- (<5 %) |
最小読出し時間 | 0.18 sec |
スループット | 10-20 % including all optics |
メモリー効果 | flushed out in 5 cycles |
図1は典型的なフラット画像である。量子効率の大きな勾配と数多くのバッドピクセルが点在する。ただし、Aladdin II としては標準的なものかもしれない。最近、バッドピクセルの数に増加傾向が認められるので、検出器がヒートサイクルに弱い可能性もある。
図1:
図2:
CIAO 単体および補償光学使用時の結像性能を表4にまとめる。後者は基本的に補償光学の性能評価でもある。現状の補償光学は、設計段階での見積もりストレール比が得られていないが、新しいシミュレーションに基づく値とはほぼ一致するということである。
項目 | Jバンド | Hバンド | Kバンド |
回折限界 | 0.039" | 0.051" | 0.069" |
AO無しFWHM | 0.54" | 0.43" | 0.37" |
AO有りHWHM | 0.15" | 0.06" | 0.07" |
AO無しStrehl比 | 0.0072 | 0.014 | 0.030 |
AO有りStrehl比 | 0.030 | 0.103 | 0.283 |
バンド | 中心波長 | 波長幅 | 限界等級 |
J | 1.25 | 0.16 | 23.4 |
H | 1.64 | 0.29 | 22.1 |
K | 2.20 | 0.34 | 21.9 |
L' | 3.77 | 0.70 | 16.5 |
M' | 4.68 | 0.22 | 12.7 |
(0.5" seeing and 1.0" aperture in diameter、background-limited)
図3:
図4に補償光学有りのもとでのコロナグラフ有りと無しのPSFを示す。
コロナグラフによるハローの低減は20%程度に留まっている。理由は、補償光学のStrehl 比が当初予想(〜0.7)よりもかなり小さく、また、補償光学で除ききれない波面誤差が有り、ハローに残ったエネルギーをコロナグラフで十分抑制できないためである。ただし、CIAO およびその他一般の地上コロナグラフにおいては、後述のように、ハロー低減以外の効果が大きい。
図4:
b) 透過マスクの利用
CIAO のマスクは2%程度の透過率を持つので、対象天体および参照星のセンタリングが容易である。既存のコロナグラフはこの機能を持たないため、観測効率が落ちている。また、マスクの支持部が無いため、非常に対称性の良いPSF が得られる。ただし、副鏡スパイダーパターンの非対称性によるPSF の複雑さが有る。
c) リアルタイム瞳撮像
CIAO はコマンド一つで像撮像と瞳撮像を切り替えられる。補償光学システムを含む装置取り付けおよび装置たわみによる光軸のずれはほとんどのすばる観測装置では無視されているが、CIAO では「観測中に」これをチェックし、より良いPSF を得るための光軸調整ができている。例えば、他装置で問題になっている熱背景放射のグラジエントは光軸のずれが原因の一つと考えられるが、CIAO では問題になっていない。
d) 長時間積分
赤外素子はCCD と異なり飽和による隣接する素子への影響は無いはずだが、実際は、メモリー効果の問題や、飽和を避けるための短時間積分により結果的に検出器リミットの観測になってしまうなどの問題がある。コロナグラフの利用により、やはり、明るい天体の近傍の撮像がS/N 良く得ることが出来ている。
e) それでも高ダイナミックレンジ
実測値として、0.6”シーイングの際に、H バンドで1 秒角離れた場所で10 等の天体が6σで検出できている。これにより、従来のコロナグラフでカバーできなかった観測領域が観測可能になった。(図5参照、中島ほかより)
図5 CIAO で観測可能になった近傍の比較的若い恒星の周り系外惑星探査のためのパラメータスペース(斜線)。▲はドップラー法によって検出された系外惑星の質量と軌道半径。CIAO とドップラー法は相補的である。以前のパロマーコロナグラフでは右上の台形部分が探査された。
図6:CIAO偏光器の場所について
b) 円偏光観測モード
(理由:1/4波長板が納品されたところ。新規Wollaston prismの製作が必要。S03B期に試験ができる予定)
c) 分光観測モード
(理由:一度製作した分散素子が、仕様通りの性能を満たさなかった。
今後、再制作し直し、S03B期から試験ができる予定)
d) 観測装置の観測所への引き渡し予定
2003 年秋以降希望(新規アレイ導入後)
基本的に可能だが、検出器感度・一様性の向上が望ましい。
地上でコロナグラフに特化した装置はGemini/NICI まで出てこない。
HST コロナグラフに比べ、中心星近傍の構造を見るのに適している。
前回資料の付録「世界のコロナグラフ」(この報告書最後)を参照。
S02A-170 | Fukagawa et al. | 2夜 | データ解析終了、一部論文出版済 |
S02B-089 | Sugitani et al. | 2夜 | 悪天候のためデータ取得できず |
S02B-042 | Hayashi et al. | 3夜 | データ一部取得 |
S03A-021 | Tamura et al. | 2夜 | 観測済 |
S03A-178 | Saito et al. | 1夜 | 未観測 |
S03A-019 | Sugitani et al. | 2夜 | 未観測 |
合計 | 12夜 |
S02B | Hayashi et al. | 5夜 | データ一部取得 |
S01A-UH??A | Jewitt | 1夜 | データ解析中 |
S02A-UH30A | Liu | 1夜 | データ解析中 |
S02A-UH38A | Martin | 1夜 | データ解析中 |
S03A-UH34A | Martin | 1夜 | 観測済 |
S03A-UH9A | Martin | 1夜 | 未観測 |
合計 | 5夜 |
S02A-OT15 | Morino et al. | 0.5夜 | データ解析中 |
(準備中)
すばるオリジナル原始惑星系円盤:数編
若い星のクラスター関連、晩期型星、若い星の星周構造の偏光:各1-2編
装置本論分:1編
コメント:
共同利用に基づく装置論文実績は汎用的装置の方が多いのは自明である。もし、装置同士の比較をするのが目的ならば、総数でなく、割り当て夜数で規格化するべきである。
b) 外注への反省
当初スケジュールが遅れた理由の一つは、国内における低温駆動技術の育成の観点を省略し、海外の経験のある会社に頼った結果、その納期が遅れたことにある。国内会社であればもっと強硬な対応が取れたかもしれない。これは我々の反省点の一つである。
c) 他装置との連携
CIAO の性能は補償光学(AO)との連携で発揮される。しかし、AO のスケジュールが遅れてしまったために、CIAO だけが単体となる期間が1 年ほど継続した上、CIAO とAO との連携操作を試験する時間が限られてしまった。スケジュールの遅れは、CIAO 側もAO 側もマンパワーリミットだったので仕方なかったと思われるが、お互いの連携をもう少し行うべきであった。
d) 他装置との差別化
すばるの装置には同じような機能が重なりすぎてしまった。当初、多数の装置を製作するかわりに、それぞれの機能を差別化する意見が委員会でも主であったと思うが、装置レビューの間に何時の間にか「汎用装置を製作した方が勝ち」という雰囲気で装置側が勝手に、例えば、分光だけでなく撮像機能も同等に付加したりしたためにそのような状態になったと思われる。その結果、装置が多すぎる、要らない装置が有るという議論が出てくると、結局、「汎用化機能を付けなかった装置は損」ということになり、(今後の)特色のある装置製作をエンカレッジしない。この問題は、次期望遠鏡計画でも同じであり、必須となる汎用大型装置の製作と他の望遠鏡に無い観測装置との両立を限られた予算で実現する方法を考える必要がある。
e) 汎用補償光学系から専用補償光学系へ
CIAO で本来必要な非常に高いStrehl 比や、安定した素性の良いPSF を実現する機能を持った補償光学は、現在の観測所のスコープには無い。観測が難しい年老いた木星型巨大系外惑星の直接検出などのサイエンスを行うためには、PI 装置的な補償光学の導入(例えば、超多素子のものなど)などの検討が必要であると考える。マンパワーとの関係もあり、国外のコロナグラフチームとの共同開発なども検討すべきであろう。
b) フィルタータレットをフィルタータレット現在の2 連から3 連に増加し、高分散グリズム分光およびより多種類のナローバンド撮像を可能にする(2004 年度)。
c) 1/4 波長板を整備し、赤外円偏光観測を可能にする(2004 波長板年度)。
d) 新規補償光学への対応。
CIAO の現在の光学系はJ バンドにおける回折限界を正しくサンプリングできる。CIAO としてはカセグレン焦点がベストであるが、ナスミスに設置される場合はその対応が必要になる。
Instrument Name | Telescope | Adaptive Optics | Usable Mask Size | 発見的代表天体 |
Optical | ||||
Lyot coronagraph | Pic du Midi 0.2m | --- | ~30' | 1930 年代;太陽用 |
LPL coronagraph | LCO 2.5m | --- | 7" | β Pic |
JHU-AOC | Palomar 1.6m | tip/tilt | 4"-6" | Gl229b, β Pic |
STIS coro. | HST 2.4m | in space | wedge mask,>9.5" | HD 100546, etc. |
ACS coro. | HST 2.4m | in space | 1.8" | 3C 273 |
Infrared | ||||
UCLA coronagraph | KPNO 2.1m | --- | 6" | T Tau, IRC+10216 |
CoCo | IRTF 3m | tip/tilt | 3" | 55 Cnc? |
ADONIS coro. | ESO 3.6m | ADONIS | 0.8" | ι Hor? |
NICMOS coro. | HST 2.4m | in space | 0.6" | HR4796A, TWA6 |
CIAO | Subaru 8.2m | 36 elements AO | >0.2" | HD 150193A, more to come |
PalAO | Palomar 5m | 241 elements AO | TBD | |
In construction | (完成予定) | |||
NICI | Gemini-S 8.1m | 85 elements AO | TBD | >=2005 |