2012年度光赤天連シンポジウム「2020年に向けてのロードマップ」 議事録 (文責:峰崎、深川) 1.日 時 平成24年8月9日(木) 9:30− 10日(金) 16:30 2.場 所 国立天文台三鷹大セミナー室        (TV会議: 国立天文台ハワイ観測所、ASIAA、京都産業大学、             東北大学) 3.参加者 約130名 注1)発言意図と異なる表現等にお気付きの場合は、光赤天連運営委員会    までご連絡ください。(gopira-board@ioa.s.u-tokyo.ac.jp) 注2)サイエンス、技術的な質問・コメントについては掲載していない    ものがあります。 ● セッション2:すばるの中期・長期計画 ○ すばるの中期長期計画、国際連携 : 有本 信雄 (国立天文台)  講演で示された国際展開戦略に賛成。  マウナケア国際天文台の、共同運用の中心にあるのはハワイ大学か。  →ハワイ大学は自分たちが中心だと思っている。  アジア枠創設によって、すばるが得られるメリットは何か。  →GMT, TMT 時代におけるアジア諸国側のメリットがある。まずはこちら   から側からメッセージを送る。  TMT時代にはインド、中国が 10% 程度の時間を持つ。早い時期からの若手  の連携はメリット。  アジア諸国にすばる運営費を分担してもらうのはどうか。   →段階を踏んだ方が良いだろう。まずはアジア枠創設から始めたい。 ○ 戦略枠観測の現状と今後の見通し : 吉田 道利 (広島大)  戦略枠夜数シミュレーションで、PFS によるピークが予想されている。  その計算における仮定は?  →HSC 枠はまだ終わっておらず 35夜ぐらいの要求と仮定。PSF は 30夜   ぐらいの提案ではないかと想定している。  一般共同利用枠の減少を補うため所長時間が使われているが、所長時間は  装置性能評価等のためのエンジニアリングに使われる。そこを減らして運  用上の問題はないのか。  →所長時間からの補填は、せいぜい 10夜程度内の補填。 ○ HSC の現状と戦略枠観測 : 宮崎 聡 (国立天文台)    戦略枠観測のデータをどう公開していく計画か。  →データ解析パッケージはプリンストンと共同で開発中。カタログ、画像   の両方を、日本(全体)、台湾、プリンストンに公開。最初期は 1.5年   後程度で公開したい。ただし、画像データはかなり重い。   研究テーマ遂行を国際協力でどう進めるかについては、SDSS のやり方   をモデルとする予定(collaboration 内でまず手を上げる)。   詳細は 9月の三鷹での研究会で。 ○ PFS : 菅井 肇 (IPMU) ○ 次世代広視野補償光学系 : 高見 英樹 (国立天文台)  他の望遠鏡で広視野赤外装置の計画はないのか。  →他はせいぜい 7分角程度。すばるは他の望遠鏡に比べ広視野装置をつけ   られる余地がある。LBT, VLT は可変副鏡 AO は先行しているが、カメ   ラがない。  予算獲得の点で、難しそうに聞こえる。マウナケア天文台構想など 国際  共同パートナーを作る予定は。  →Gemini は GLAO 製作を希望しており、motivation の結集にはいい。た   だし、半分くらいは自分で手当する力がないと成り立たないので、まず   はそれぞれで進める。  回折限界に合わせた pixel scale でそんな広視野が可能か。  →4k x 4k H4RG を 3個で可能。  レンズを多数枚使用しているが、クリーンな光学系が要求されるのでは。  →確かにスループットは重要。MOSFIRE の効率は結構いい。13' 程度まで   は問題なくできることが分かっており、20' を設計検討中。 ○ 8-10m 地上望遠鏡の将来装置計画 : 秋山 正幸 (東北大)  Gemini は限られた予算内の、内向きの装置計画。Keck NGAO は規模が大  きいので、予算の見通しがない。その状況の中で、Subaru がどうしてい  くのかを考える必要がある。  VLT は装置開発を活発に考えているように見える。ヨーロッパは E-ELT  を進めつつ、VLT を維持していくのか。  →E-ELT の基礎開発として VLT を利用する意図もある。  Gemini Science metting では装置開発や長期計画は戦略的に整っていな  い印象。その点、すばるは広視野戦略ということではっきりしている。  NSF も今後広視野サイエンスを推すことが分かっている。すばるはうらや  ましい状況。  VLT はやはり比較的活発。ヨーロッパは ESO で E-ELT と VLT を統一的  に考えられる。そのような役割をマウナケア国際観測所が担っていくと  期待され、国立天文台がリーダーシップをとっていきたい。 ○ すばるの長期計画とTMTとの連携 : 嶋作 一大 (東京大)  TMT を推進しつつすばるにも人材と資金を多く投入するのは困難。国立天  文台だけに頼らず、外部から獲得するという考え方も必要ではないか。  今後の観測戦略策定のために、日本の優秀な理論家にアイデアを出しても  らうようなワーキング・グループを作ってはどうか。 ● セッション3:TMT と中型望遠鏡計画 ○ TMT計画の現状報告と日本からの寄与 : 家 正則 (国立天文台)  1500億円の 25% を日本が負担する中、並行してすばるの運用や新規装置  開発を予算要求していくのか。  →今はとにかく TMT 優先。TMT とすばる関連の概算要求を同時期に行う   のは無理。すばる次期装置などマッチングについて決断はできていない。  すばるの方は、競争的資金獲得と国際協力で進めるという考え方が重要で  はないか。  一つの機関で 3つ (Subaru, TMT, ALMA) という状況は、予算措置上、困  難。TMT+Subaru のシナジーは死守すべきである(Subaru はなくさない)  が、予算上の枠組みとしては、ALMA と TMT+Subaru という枠組みで対応  していきたい。  大口寄付を募って TMT の naming rights を売ってはどうか。  →日本名のを付けられる可能性はある。寄付については、基本的に   Moore 財団を超える寄付でないと難しい。  文科省の意図としてはハワイ観測所を発展させる方向なのか。  →いまは TMT を前面に出す。しかし Subaru と TMT の融合を要求されて   いる。  予算規模が大きく違うが。  →運営費の問題がある。ALMA は今後運営費を増額しないと立ち行かない。   その上で、Subaru と TMT の運営を考える必要がある。 ○ 国内における装置検討状況と展望 : 柏川 伸成 (国立天文台)  最後の第2期観測装置が実現するのは25年後となり、学生だけでなく研究  者でもそれに関わっていくのは難しい。また開発期間が10年スパンになる  と、その間の技術の発展を反映することが困難であると思われる。例えば、  いまから第1期装置の見直しを提案することはできないか。  →第1期装置については既にかなり設計が進んでいるので、キャンセルす   ることはない。ただし、機能強化・絞り込みなどの議論は、その時々の   状況に合わせて行われている。それは今後も同じ。  第2期以降は call for 毎に1台が募集されることに注意。1装置あたり  にかかる時間は、提案からファーストライトまでが 10年程度となる。  第1期観測装置にもある程度参加できるようになったので、議論にはぜひ  加わってほしい。今後も同様な動きをエンカレッジしたい。  Call for の前の活動については。  →装置採択されるには、SAC への売り込みが重要。概念設計の提案書を   SAC メンバーに早めに送るなど、かなり活動する必要がある。  日本の TAC で審査して PI 装置を取り付けることはできるか。  →検討中。その場合は、TMT予算で開発する装置の場合のような審査プロ   セスは必要ない。ただし、持ち込み装置として十分かどうかの審査は行   われる見込み  観測者が直接観測するモードがあるとのことだが、非効率ではないか。サ  ポート・アストロノマーがオペレーションを行うというモードを検討して  も良いのでは。  →すばるのクラシカルモードで本当にリスクが下がっているか、検証する   必要もある。またオペレーション体制を日本独自につくるオプションは   ある。日本で SS を雇って送り込むことは可能。  装置の GTO はどれくらいあるか。  →せいぜい3−4日程度で、ほとんどないと考えるべき。良い装置を作る   ために日本が協力し、それを TMT に送り込むという考え方。 ○ 京大岡山新技術望遠鏡 : 長田 哲也 (京都大)  空白地帯を埋めたいのか、次世代研究者の育成なのか、サイエンスなのか、  この望遠鏡の目的としてどれがもっとも大切と考えるか。  →すべて。  稼働後の運用体制はどうなる予定なのか。  →京大理学系付属天文台、京大宇宙物理スタッフ、岡山観測所から合計   6-7名くらい。  共同利用枠でないデータのアーカイブ化についてプランを教えてほしい。  →まだ議論はされていないが、原則的には一定期間後に公開の方向。  3.8 m の一番の目的は何なのか?  →どれも大切だが、その上で、新しいタイプの技術開発が日本のコミュニ   ティに役立つことを期待したい。  大学望遠鏡と共同利用望遠鏡とは本質的に違いがある。共同利用を出すこ  とのデメリット(大学の予算消費等)をどう考えるか。  →大学利用と共同利用時間を半分づつに分ける事で両者を共存してメリッ   トを出すことができると考えている。  (京大望遠鏡の主目的に関する質問に対して)  根本的に最重要なのは大学の基盤強化である。その中身として、サイエン  ス的要請から空白地域に設置することが重要となっており、また技術開発  の重要性がある。  装置のみ開発する大学にとっては搭載する望遠鏡が存在することになり、  また、もっと小規模の各大学の研究室向けに共同利用を考えている。ただ、  大学間連携が実現しつつあるので、議論によっては、3.8 m の一般共同利  用枠を減らすという解もあるかもしれない。  サイエンスについては、系外惑星にとどまらず、いろいろなやり方がある  だろう。  運用体制について、配置や組織の変換も議論されているか。  →付属天文台将来計画にて決まっている。 ○ 東大 TAO 望遠鏡計画 : 土居 守 (東京大)  望遠鏡からの熱放射を最小限に抑える工夫は。  →標準的にやる。 20−30 micron 帯は、マウナケアだと大気リミット。   それが望遠鏡リミットに近づくだけでもゲインがある。すばるの経験が   重要なので、ぜひご協力いただきたい。  JWST との競合は。  →観測波長や観測機会の面で TAO に独自性がある。また、JWST に観測天   体を供給できることを期待している。  運用経費について。50億の概算要求を出しているということは、運用も東  大がやるということで、本部が了承しているのか。  →建設の概算要求とは別に運用経費について考えていく。miniTAO 経験か   ら、運用費は 1/50億ぐらいでいけるだろうという感触。 ○ 南極望遠鏡の進捗状況 : 市川 隆 (東北大)  隊員に異常があった場合の対応、隊員の選考、作業の安全基準は?  →異常時に帰国することは不可能であるが、学生はとくに問題なく隊員の   セレクションに合格している。安全基準は極地研の基準を適用。  飛行機でアクセスできる基地に変更の予定はないか。  →観測条件の良いドームふじから変えることは難しい。また他のサイト   (ドーム A, C)も飛行機でアクセスできない。  24時間連続観測ができるのは、マイクロレンズによる惑星検出に有用。ぜ  ひ一緒にやりたい。  →γ線バーストのフォローアップなども考えられている。南極望遠鏡側の   準備が整えば、こういった提案を歓迎したい。  マウナケアサイト、TAO サイト、ドーム A サイトなどとの比較について。  →瀬田氏による電波波長域の観測条件測定データによれば、ALMA サイト   と比較して安定して好条件であることがわかっている。安定性は南極の   方が断然良い。  ビジビリティについて。積雪があるとのことだが、ドームの耐久性は。  →サイトの緯度は -79度、どこまで低高度まで観測できるかによる。   降雪量はそんなに大きくはなく、また新たに建設した(する)建物は、   すべてジャッキアップできる。 ○ 広島大東アジア望遠鏡計画:吉田 道利 (広島大)  魅力的なサイトになりそうだが、共同利用や共同研究が可能か。  →未検討だが、ありうるとは思う。50 cm パスファインダーでサイトの   良し悪しが分かってくるはず。  同じく突発天体対応の、京都 3.8 m との関係は?  →指向速度については京都3.8mで問題ない。建設タイムスケールの点で、   3.8 m よりもう少し早くやりたい。こちらは偏光をメインにしたいが、   その場合は 3.8m の分割鏡の採用が問題になるかもしれない。  中国製望遠鏡を考えているか。  →議論はまだ。 ● 議論 − すばる長期計画、TMTの実現、参画に向けたロードマップ    司会 : 山田 亨 (東北大)  議題の提案:  1.すばるは広視野に向けて重点化する。一方、これまで担ってきた、大    学のアクティビティをサポートするという役割(例えば、新装置開発    の試験等々の目的による持ち込み装置)を、どのくらい残すのか?     TMT が本格的に走ると、そのような活動にさけるマンパワーも限られ    るかもしれない。  2.TMT に人と資金が流れていく時期に入る。その中で、どのようにすば    るの活動を維持するのか? 各大学にも様々な装置計画がある。その    ような活動との関係は?  先端的装置開発アクティビティを維持するためには、すばる望遠鏡におけ  る新観測装置の開発が必要ではないか。  それは非常に重要。すばる望遠鏡と同規模の望遠鏡でも可能。TMT は超大  型装置が前提なので気軽にテストも難しい。大規模な装置を作る場合でも、  そのような試験を経た段階的な開発が求められるのでは。ここで開発をや  めると、開発人口が絶滅する恐れがある。  文科省にすばるの必要性を説明するにあたって、Euclid など海外の大型  計画との国際共同研究を利用できないか。  TMT がファーストライトを迎えるまで、どのように人とお金を配置するの  か。PFS, 新AO や対応する装置を作り、稼働させるということは、TMT に  必要なマンパワー・お金と干渉するのではないかという心配がある。  ヨーロッパやアメリカに依存しすぎないほうが良い。日本として TMT と  SPICA をメインにロードマップを考えてきた。その前提で、Subaru、TAO  等々を考えていく必要があるのではないか。  TMT 時代には、装置開発スパンが長くなる。また、TMT だけでは幅広いサ  イエンスのすべてがカバーできない。その状況を踏まえた上で、他の望遠  鏡の存在意義を説明できるようになると良い。  TMT に移行したのち、国内のアクティビティをサポートするか、国際共同  サーベイを中心とするのか。  いつの時代も共同利用の需要はある。ただし今稼働している装置も古くな  っている。ここをどう考えるか。2020年代までは?それ以降は?  すばるが広視野サーベイに特化していくと、こぼれ落ちるサイエンスがた  くさん出てくる。それを他の望遠鏡との協力関係を念頭に考えていく必要  が出てくるかもしれない。この方向性について、ユーザーとしてどう考え  るか。  高額な運営費について考える必要がある。  すばる運営費 30億円/年  ALMA 運営費 15億円/年→30億円/年  TMT運営費  30億円/年  →すばる+TMT の圧縮を考えていく必要がある。予算確保の戦略の話と、   取ってきたお金をどう使うかという議論は別であると考えたほうが良い。  TMT 移行後、国際協力に時間を使うのか、大学等のサポートに時間を使う  のかという点についてだが、枠があって、その中で定量的に評価する状態  にしないと、議論は難しい。  国立天文台として将来のシミュレーションが必要なはず。  シミュレーションで問題になる、観測時間の使い方については、コミュニ  ティで考えていくべきことである。例えば、2020年代、TMT 運用期に、す  ばるが広視野に特化するという案についてどう思うか。  例えば観測装置開発において、天文台の責任範囲をどう考えるか。0か1  かではなく、オプションがいくつかあるのではないか。大学でコンソーシ  アムを作って、外部から資金を獲得し、装置開発する等。  2020年代に Euclid や LSST が立ち上がる中で、すばる PFS、HSC などの  海外からの需要は大きい。国際協力を通して考えると、すばるが活きる道  は十分ある。  光赤天連シンポは、いつも結論を次に持ち越している。獲得目標を作って、  そこへ向かってきちんと議論する時期にきているのではないか。  議論の時間をもっと長くとるべき。午後の講演が長すぎる。  シンポの場では、様々な論点を出してもらうことがまず重要だと考える。  それを結論に落としこむのは、すばる小委員会、TMT小委員会等々。実際  問題、人数を絞った場で議論を詰めていかないと、結論を出すのは難しい。 ● セッション4: SPICAと中型スペース計画 ○ 次世代赤外線天文衛星 SPICA : 中川 貴雄 (JAXA)  感度の高い BLISS はどうなっているのか。  遠方天体の輝線観測などで SAFARI では感度が足りないのでは。  →国際審査の中で、米国から提案がなかった。z=2-3 までなら SAFARI で   可能と評価している。 ○ SPICA装置検討状況と展望 : 片坐 宏一 (JAXA)  ジッターの問題について詳しく教えてほしい。  →衛星の実績でしか評価できないのが難しい。  MSC と SAFARI を合わせてサイエンスプログラムを考えるという点は良い  と思う。装置間のキャリブレーションに問題はないのか。  →各装置のキャリブレーションをどうするかは、これから詰めていく。   SAFARI と MCS で重複する波長域があるので、クロスキャリブレーショ   ン可能。  5’視野ということだが、ロングスリット 5'分光ができるのか。多天体  分光は可能か。  →多天体対応についてはグリズムがある。遠方銀河の分光など、近くの天   体の混入が気になる場合は、7" スリットに入れる必要がある。  リソースが許せばパラレルモード観測にも対応したい。  近赤外〜遠赤(FPCI, MCS, SAFARI) すべてをうまく使って観測戦略を考  えると良い。 ○ JASMINE 計画 : 郷田 直輝 (国立天文台)  小型 JASMINE で測定可能な星の数は。  →もっとも高精度測定が可能なのが1000個、全体では数万個になる。  Kepler 的な観測機能は持たせられるか。   →難しい。ただ、系外惑星をアストロメトリで探せるかもしれない。 ○ WISH : 山田 亨 (東北大)  Euclid, WFIRST あるいは両方が実現するならば、WISH は 2um から長波  長だけでもいいのか。  →Euclid は実現するだろう。ただ、Euclid は可視光の測光・分光に重点   を置く。宇宙再電離を超えるサイエンスをやるには、ピクセルスケール、   深さの点で不十分。この点で WISH 1-5um は相補的。   WFIRST は JWST の後に開始、早くて 2025 打ち上げになると予想され、   WFIRST の前に WISH を打ち上げることが目標となる  WISH にかかる費用は。  →WISH 本体100億円、ミッション100-150億円、合計 250〜300億弱。  SPICA は擾乱が問題で、tip-tilt が要るという話だが、WISH はどうか。  →冷凍機がないので、擾乱源はリアクションホィールのみで小さいと期待。   仕様は0.07arcsec/5分、低周波の揺れは焦点面ガイドで補正できる見   込み。 ○ JTPF−地球型惑星検出に向けて : 芝井 広 (大阪大)  国際協力に食い込んでいく際、日本側のキーになるのは何か。  →日本独自の技術をもって、基礎開発を行う。こちらが最初に始めると、   向こうから協力の要請が来る。Subaru や SPICA の観測時間。   サイエンスの実績を挙げることが最重要。  日本が参加できる可能性の高い国際計画と、そのスケジュールは。  →個人的意見では、WFIRST、Echo(系外惑星大気の分光)。また、NASA   が我々と同様の気球ミッションを検討している。 ○ Euclid、WFIRSTの現状と日本の参画について: 住 貴宏 (大阪大)  9月4日に 2.4m のスパイ望遠鏡をどう使うか、議論する会議がある。  WFIRST の装置、サイエンス・デザインは変わるのか。  →新しいチーム編成等はおそらく無い。2.4m でも打ち上げにはお金がか   かる(billion)ので、今後の予算次第。  外からみると、Euclid, WFIRST, WISH など、同じような望遠鏡に見える。  すべて必要なのか?マージする可能性は?  →Euclid と WFIRST はマージの可能性を探っていたが、物別れ。NASA 赤   外線検出器を Euclid に提供しつつそれと合わせてサイエンスを達成す   るような WFIRST のスペックダウンオプションを検討した。  →WISH とはぎりぎりまでは独立、将来はわからない。  米国エネルギー省から予算はでるのか。  →エネルギー省はもう関係ない。 ● 議論 − SPICA計画の実現に向けたロードマップ   司会 : 市川 隆 (東北大)  挙がっているスペース計画のまとめ   長期計画    大型計画    SPICA, JTPF    中型計画    WISH, JASMINE    海外計画に参加 Euclid, WFIRST  議題の提案:  1.SPICA 計画の実現に向けたロードマップ  2.観測装置(FPI)の最終仕様  1.に絞った議論を行う。  学術会議で、今後 10〜20年に推進すべき大型計画として TMT, SPICA が  すでに挙がっている。これをしっかり進めるべきだという前提で議論を進  める。  Euclid, WFIRST に日本が加わる場合に、他の日本から出ている衛星計画  と干渉するのか?  宇宙研が窓口で、関連予算は宇宙研に入ってくるので、その点ではコンフ  リクトがある。参加の仕方によっては、例えばハードの開発をしないなら、  干渉しない。  Euclid, WFIRST に費用分担して参加するのか。  Euclid はない。WFIRST はハードの協力の可能性がある。その場合、  50-100億円程度と予想される。  SPICA と競合するか?  (1) JTPF は、SPICA の後にやると明言している。  (2) JASMINE   小型 JASMINE は、小型科学衛星 call for に応じてなので SPICA との   直接競合ではない。   中型ジャスミンについては、国際協力もしくは WISH 等の国内計画との   マージを考えている。SPICA の後。  (3) WISH   SPICA と競合する可能性がある。厳密には、宇宙研の中のスペース計画   の予算プロファイル、大型・中型・小型をどのような戦略で進めていく   かという点や、各計画のスケジュールに依る。SPICA が WISH の後にな   った場合は、SPICA を実現するための最大限の努力が行われるはずなの   で、その中で WISH をどのように作っていくか、というのが課題。  (4) WFIRST   NASA 予算がつくのは、2018年 JWST 後。SPICA が予定どおりなら   SPICA の後になる。ただし WISH と競合する可能性がある。  小型 JASMINE の費用はいくらか。    ミッション側が使っていいのは 10億(打ち上げ等込で合計 70億)。小型  が今年度認められたとしても、打ち上げは最速 2017年。  中型 JASMINE は WISH とのマージが現実的オプションか。  当面は小型 JASMINE に集中。WISH とのマージについては両者の共通点を  見いだしている段階。本当にマージできるか、スケジュールをどうするか  の議論は、まだ。  TMT も体制の問題を突かれている。外から見ていると、SPICA も宇宙研だ  けではできない。JASMINE や WISH など、外野からやっているのは現実味  がないのではないか。宇宙研にそれら計画のコアチームを作ることはで   きるのか。  Astro-H の次の中型も X線。中型として AKARI, SPICA につながる光赤外  衛星を Astro シリーズで考えられるなら、その枠組みで、宇宙研・国立  天文台において WISH を実現するための議論が行われても良いのではない  か。  ミッション規模の定義を明確にしておきたい。  (打ち上げ費用込の JAXA 負担分)  - 小型:100億以下  - 中型:250億以下  - 大型:500億以下  外からみれば、いずれも大型で、プロジェクトマネージメント、戦略的な  開発体制が必要。  宇宙開発利用という分野の中で、先導的な役割を果たしたい。国は、宇宙  利用開発に大きく舵を取ろうとしており、宇宙科学がおざなりにされつつ  ある。宇宙科学分野が国費を何100億も使うという覚悟が必要。そのため  には、ある程度の選別は必要であり、個別の議論ではなく、全体を見据え  て戦略的に考えることが重要。  どの計画をどのタイムスケールでやろうとしているのか、年表があると考  えやすい。複数のプロジェクトを俯瞰したプロジェクトマネージメントが  必要では。  SPICA のロードマップに中型計画の位置づけをどうするか考える。  現在は、リスク低減フェーズ中。次は、SDR というステップ。ここに向け  て、何かコミュニティでアクションしなければいけないのではないか。  2006年にTMT推進の光赤天連声明を出したが、SPICA についての記述は不  十分。  SPICA 推進の光赤天連声明を出すことを提案する。たたき台は運営委員会  で検討。  声明の提出先はどこか。  SPICA 推進の光赤天連声明の話は1年以上前から内部的にあり、もともと  大学基盤整備声明の次に SPICA 声明の予定だった。SPICA にフォーカス  するのか、スペースプロジェクト全体を含めるのか。声明で他のスペース  計画に言及するとなると、そこをどうするかが大変難しい。  光赤コミュニティ外から見たときに、100億オーダーのお金を使って得ら  れたデータを、きちんと成果に結びつけられるかも試される。  SPICA だけ取り出して声明にしても、効力がない。大型計画のシナジーを  きちんと示すのが良いのではないか。  中小計画の重要性はよく分かるが、コミュニティは SPICA のために他の  ことを我慢できるか。推進すべきものを推進していけるのか、それを問  いたい。ぶれない光天連としての姿勢を示すべきなのではないか。  SPICA 声明はぜひ出してほしい。提出先には宇宙理学委員会などが考えら  れる。文科省(宇宙開発利用部会)、内閣府のレベルにも、相手にされる  かは別として、出していくのが良い。  運営委員会での議論の様子も、ネット等を通じて、会員に伝わるようにし  てほしい。 ● セッション5 : 全体のシナジー・各機関の役割・ロードマップ ○ 大学の開発アクティビティと大型計画 : 宮田 隆志 (東京大)  今後の計画について、中規模計画が進まないと大型計画をスタートできな  いと解釈されかねない危険がある。  →各プロジェクトだけならそうかもしれないが、コミュニティ全体として   活動を今後も長く続けるためには、中規模計画が必要であることを強調   したい。  予算獲得が難しい昨今、大規模・中規模の相補的な関係が必要であるとい  う主張には無理がある。  TMT が各大学にメリットがあるという議論は、これまであまり無かった。  TMT 装置開発などで実際にやれる方法を模索したい。 ○ 大学が大型計画に参与し易い枠組みの構築へ向けて : 川端 弘治    (広島大)  TMT については第2期観測装置の開発を待たず、第1期観測装置の議論に  入っていくほうが、近い将来であるし、やれることは結構ある。  →興味のある人は入っていけると思うが、定常的な参加を考えると、何ら   かの見返り(GT 等)を同時に考える必要があるのではないか。  装置や開発要素のダウンセレクションがあったとき、どうするのか。  →ダウンセレクションされても貢献としてカウントすべき。 ○すばる・TMT と将来の衛星計画の連携戦略 : 松原 英雄 (宇宙研)、 宇宙開発推進体制の改革:中川 貴雄 (JAXA)  波長と角度分解能が大きくことなる装置間のターゲットのマッチングにつ  いて、SPICA では戦略があるか。  →基本的には空間分解能のより高い装置でつないでいくしかない。分光的   に特徴がある場合にはその限りではない。  スペースと地上はミッションライフタイムが違うことに注意。  他計画(多波長含む)とのシナジーをまとめて、光赤コミュニティ外に示  せるようにしてはどうか。  宇宙開発利用推進体制の変革について紹介:   ミッション実現までのプロセスにおいて、国際科学協力はどう扱われる   のか。   →新しい法律の中にきちんと書かれていない。     文科省レベルでの MOU は過去にあったのか。   →宇宙ステーション。科学ミッションについては、宇宙研は MOU を結    ぶ権利は無い。   学術会議からの提言で実現した項目があったが、具体的にどういうこと   だったのか。   →宇宙政策委員会に宇宙科学のメンバーが入った。  ロードマップの発展的改訂に向けて私見:  2020年代の光赤天文にとって、全てが大事と発信していくのか、TMT や  SPICA の実現のためにはいま我慢できると発信するのか。一番大切なのが  TMT と SPICA であることを再確認したうえで、大型だけではコミュニテ  ィが成り立たないのなら、その理由を説明すべき。他のことをするなとは  言わないが、あるなら使う、というレベルではコミュニティが強く推す計  画とはいえない。  学術会議への中規模計画推薦に関しての選択肢:  - 大型計画が最重要。その中で、他にいくつも中型の最重要が出てくると   いう状況は、理解が得られにくい。つまり、中規模計画を1−2個選ん   で推薦する。  - 小中口径の多角的な連携していくことを最重要と考えて、3〜5年スケー   ルで見直される中規模計画を何も推薦しない、という選択肢もある。一   番大切なのが TMT と SPICA であるということをコミュニティという意   志を示すためである。  今後のプロジェクトについて以下の部分はある程度整理できている。   地上: 岡山 188cm 後継が京都 3.8m、TMT   スペース: SPICA 最優先  改めて整理が必要なのは、地上では TAO(NIR サーベイ)、すばる GLAO+赤  外広視野、スペースはWISH、小型 JASMINE。また SPICA のスケジュール  変更(2018→2022打ち上げ)の影響も再検討すべき。  中規模計画に何も推薦しないのは得策ではないと考える。学術会議の意図  としては、推薦する大型計画を決めたから、次はこれまでサポートする仕  組みに欠けた中間のファンドレベルのプロジェクトをサポートしようとい  う意味なのではないか。つまり、これはコミュニティにとってチャンスで  あって、我々が議論して、これは、というものを出すべきではないか。  学術会議の意図について補足:  科研費で申請できることでやれば自由にやればいい。  全員が SPICA, TMT に参加する必要はない。大型については TMT, SPICA  の価値があることは一度は認められたが、それを実現して成果を出してい  けるかが問われている。その意味では10個も中規模計画が出てきては大型  計画の遂行性が疑われるし、中規模計画に大型計画とのシナジーが必要だ  ろう。  数ある中規模計画から1-2個を選べるか、疑問。また、10〜20年かかるも  のを中規模計画と呼ぶのか。 ● 全体を見据えた新ロードマップ : 岩室 史英 (京都大)  学術会議からの天文・宇宙物理学分野の中規模計画の推薦依頼について、  経緯説明  学術会議マスタープラン見直しの動きの状況はどうか。約10年前の議論を  アップデートしたような議論をすべきで、その中で中規模計画を位置づけ  るという考え方が良い。全体のプランの中での整合性が重要。  中規模計画推薦リストはどのくらいの頻度で見直しがあるのか。  大型計画のマスタープランは4年に1回改訂を努力中。物理天文以外の分  野からはマスタープランの改訂や大型計画の精選はやらない、という意見  も強い。中規模計画推薦はマスタープランとは独立に、天文宇宙物理分科  会のみの活動である。臨機応変にやるつもりで、今後も必要ならやるし、  諸状況が好天して必要がなくなればやめる。  中規模計画同士での融合の議論はできないか。  概算要求を出すもとの組織をどうするかの問題がある。  例えば大学間連携から出すようなことはできないか。  電波では国立天文台がとりまとめになって実現している。しかし国立天文  台は TMT を推進するため、大学のためにとりまとめに動くことはできな  いだろう。  現段階で概算要求を出していないものについて、推薦はありうるか。  コミュニティとして推薦しておくというのが重要で、概算要求を出すかど  うかは個々の判断。   2012/12 コミュニティ代表を個別に学術会議に呼んでヒアリング   2013/2/17-18 学術会議にてシンポジウム  学術会議の議論においては計画の意義を検討するものであり、すでに概算  要求に出ているかどうかは問わない。  リストされた中規模計画については、予算規模、スケジュール、計画の熟  成度や大規模との関係など様々なものが混じっている。一律に順位付けす  るのでなく、様々なパラメータ空間でグラデーションをつけ、適切なタイ  ミングで推薦していくようなことはできないか。  学術会議のほうでさらに議論される予定である。このとき、1個に絞る予  定か。  絞られるかどうかは未定。  宇電懇は順位付けをしたと聞くが、順位付けはしなくともよい。最終的に  は学術会議が判断するのだろうし、判断の助けになるような情報を提供す  れば良いのではないか。  学術会議に分かりにくい回答を提出するのは、かえって不利益になる。  国立天文台光赤外専門委員会では林台長から、国立天文台として推すべき  計画を議論するよう要請があった。国立天文台自身のプロジェクトもある  いっぽうで、全く関与していないのもあり、関与具合は濃淡いろいろであ  る。コミュニティの議論をベースにしたい。  TMT 計画については学術会議のマスタープランは有用であった。文科省は  コミュニティの順位付けがあったほうが判断しやすい。苦しいが、光赤天  連で順位付けしたほうが我々のためになると考える。  具体的には何らかの委員会を作ってそこで議論をするのだろう。ここの議  論では何を評価軸とするか、コミュニティで決めておくべきである。  学術会議側からは、学術的評価、緊急性、各分野での検討のそれぞれにつ  いて点数付けが指示されている。コミュニティからは、人材育成や基盤整  備の観点もコメントされた。  大学が関与するのであれば、人材育成や基盤整備の観点も当然必要だろう。  中規模計画のどれもが大切、ということにならないか危惧している。大型  計画は大切だとコミュニティが判断したはずであるから、その大型計画と  のシナジーを評価軸に加えてはどうか。  コミュニティでどれだけ議論されてきたかも、評価軸に加えるべき。  ごく単純には、何人の人が関わっているかが問われる。  それは一種の公共性の観点であろうか。  評価委員にはコミュニティ内の人物を選ぶつもりであったが、他のコミュ  ニティからも人選すべしとのコメントもあった。ただし、今回のシンポジ  ウムでの議論に参加して、コミュニティの空気を理解している人が望まし  いのでは。  また、中規模計画の評価リストが更新されずに放置されると問題である。  5年に1度以上の頻度での更新を求める予定であるが、例えば推薦リスト  の有効期限を定めることも考えられる。  学術会議としての回答しか使わないのか、ロードマップとするのか。回答  なら今回限りの回答とすればよく、光赤天連としてのロードマップなら期  限や更新は必要だろう。  新しいアイデアやプロジェクトが今後も出てくるであろうから、今回限り  とするなど、時限を明示したほうがよい。  期限を示すより、回答に日付を明示すれば良いのでは。  TMT、SPICA と整合性やシナジーを考えるべき。  我々でリストの期限を作っても意味がなく、学術会議側に期限を切っても  らう必要がある。学術会議に意見すべきことのように思う。  中規模計画については学術会議が独自に議論して報告書を出す。なお、学  術会議としては、コミュニティ内の順位付けを外に出すことはない。  報告書は何年たっても眺められるが、実効を有するのはたぶん 2〜3年程  度だろう。  そのたぶん、が気になる。  順位付け後の新規提案は、学術会議に直接出してくれればその都度対応す  る。  大型計画のシナジーというのは補完か、連携か。どう取り扱うかを慎重に  したほうが良い。またそれだけを考えるのは、分野の多様性を犠牲にする  ことにつながって危険ではないか。  予算措置が、明らかに概算要求のものから、概算要求を出すか微妙、さら  には概算要求はしないものまで濃淡がある。  今の時点で予定があれば出してほしい。評価をする際には、概算要求する  予定があるのかを再確認して、概算要求するプロジェクトだけで評価する。  小型 JASMINE も概算要求になることに注意。  いずれにせよ再確認する。  評価軸や方針について、シンポジウムでの議論を引き取って運営委員で議  論し、再度コミュニティに確認する。  外向きの対策の議論が主だが、それ以前に、内部でどうするかの議論が大  切だ。いずれも立派な計画で技術的にも可能と思われるが、その実現のた  めには予算と体制が必要であり、それらについて内部にて侃々諤々の議論  が必要。  眼高手低。(本来の意味ではないが)理想は高く、実現する際には基礎の  部分をしっかりすべき。  大型計画もある中で、他の各計画はたちいくのか。大型が最優先なら、他  はできないのではないか。  ユーザーとしても関われない計画もあるので、議論を難しくしている面は  ある。  今後の進め方について:  9月総会までには評価委員まで決めて、承認を得たい。今回のシンポジウ  ムの議論を引き取って運営委員会で議論して、経過を都度 gopira メール  リストに投げるつもりである。  実行体制について詳しくヒアリングしてはどうか。あてにしている人がオ  ーバーラップしていることが良くある。そのオーバーラップは実現性に関  わる。 (以上)