セッション5: サイエンス全体会及び議論(2014年9月10日(水)9:30−11:10)   *** 議論メモ ***   (Q:会場からの質問 A:発表者による回答 C:会場からのコメント) ◆宇宙論 高田 7名参加 サイエンスの柱を確認。目標がはっきりしている分野だと思う。 LiteBird CMB実験は、広い意味で構造形成の初期条件を与え、また初期宇宙の 物理の解明の道を与える。日本ではHSC, PFSの銀河サーベイ計画があり、CMB実験 とは相補的である。可視近赤銀河サーベイの宇宙論のサイエンスの3本柱は、 1)宇宙の曲率など初期宇宙物理、2)宇宙の加速膨張の起源(ダークエネルギー あるいは重力理論)の解明、3)多角的、統計的観点からの構造形成の物理の理解 になる。HSC, PFSが今後10年間で実現し、その後に究極的宇宙論サーベイのEuclid, LSST, WFIRSTが来る。日本は非常に有利な立場にある。 宇宙論の観点からSPICAとの相補性を議論した。宇宙論では広視野のサーベイが 必要なので、SPICAは直接的には関係ない。ただ、SPICAで数10平方度などの広い サーベイをやるのであれば、是非HSC、PFSなどの可視光撮像、分光サーベイの データがある領域でやって頂きたい。その場合、相関関数法を用いた研究が非常に 面白い。例えば、講演で触れたように、銀河カタログとクエーサーの吸収線系の 相関関数を調べることで、銀河間空間を含む宇宙空間におけるコールドダストの 分布を調べることができる。MgII吸収線系の研究で分かってきていることは、 コールドダストが銀河ハロー内に分布し、宇宙空間のあらゆるところに存在して いることだ。例えば、重力レンズ測定によるダークマターの空間分布と比較すると、 コールドダストの分布はダークマター分布とよく似ていることが分かっている。 現時点での研究はSDSSの銀河カタログを用いているので、z~0.5までのダストの 分布を調べることに成功している。HSCの銀河カタログを用いるとこの研究が、 星形成の激動期であるz~3まで伸ばすことができる。このように宇宙年齢の関数 として、また星形成史と比較しながら、宇宙におけるコールドダストの空間分布の 進化を調べることができる。SPICAでは、dusty galaxyにおける、warm dustの分布が 分かるので、上記の相関関数を用いると、銀河の星形成で供給されるwarm dustの 量を調べることができる。このようにcold & warm dustの供給量を調べることができ、 非常に面白いのではないかと思う。 <質問> Q: WISHとはどういうシナジーがあるか A: Euclid/WFIRST, LSSTという究極のサーベイがあるので、普遍的な意味で重要と なると考えられるz~3までの宇宙論という観点からは、WISHとの関係は比較的薄い。 ◆クエーサー・AGN (松岡)  役割は巨大ブラックホール班的(活動的でないBHも観測可能ということで) 新たな検討課題 ジェットの起源と性質、偏光観測、光赤外干渉計による巨大 ブラックホール近傍領域探査、zero-metal quasars SPICAは必須 ユニークな波長帯:塵に埋もれた巨大BH、母銀河の星形成  口径3mが必須という訳ではない WISHは必須 初期宇宙のクエーサー探査にきわめて重要 JASMINEは有用 銀河系中心の巨大ブラックホール <章立て案> 1. 巨大BHと活動銀河核の諸構造 2. 巨大ブラックホールと銀河の共進化 3. 巨大BHの宇宙論的進化 各小題の担当者も決めた 宇宙論、銀河・銀河団(初代天体/再電離、銀河進化)、銀河系との境界 についてどう進めるかを議論した <質問> Q: SPICAとWISHではBH班的にはどちらがより重要か。 A: 役立つ分野が違うので、なかなか答えられない。 Q: IGMをGRBでやることについても書いてほしい A: 銀河班でやっていると思う Q: SFGとAGNで区別が難しいのでX線でという話があるが、X線ミッションとの 関連も議論してほしい A: X線とは相補的。検討項目には含まれているが、章立ての中には明には表れていない ◆銀河・銀河団ー初代天体・再電離班 (松田) キーになるテーマの洗い出しを行った。2本柱 ・天体の誕生 ・宇宙再電離の起源 WISH, TMT, JWST <合同議論>  w/クエーサー・AGN  w/恒星物理班: 初代星、extremely metal poor stars、超光度超新星  w/銀河系・局所銀河班: 球状星団の起源 近傍矮小銀河の星種族と宇宙再電離 <手薄だった課題への協力>  GRBの起源 米徳氏が班に加わる  宇宙近赤外線背景放射で探る初代天体 松浦氏+αが参加 ◆銀河・銀河団ー初代天体・再電離班 (田中(賢)) 3本柱 ・星形成と質量集積の歴史 WISH ・銀河形成進化の動的過程 SPICA, TMT ・銀河基本構造の獲得 JWST 系統誤差に関する独立したセクションも設ける。 Cosmologicalな構造形成は宇宙論班へ。 Galaxy vs DMH は本班で AGN feedbackはそれぞれで書く WISH 再遠方 非常におもしろい  1-5umのシームレスな撮像ができる。ギャップが無いのでphoto-zの精度が格段に上がる  最遠方銀河もおもしろい SPICA 遠赤分光が可能、metalicity、中間赤外で星生成率  z~2-3のmetalicity 星生成率を測ることができるが、地上望遠鏡でも可能  中間赤外の撮像サーベイは非常に面白い   サイエンスが出てくるのは15年後 JWSTの後で魅力的かというとそうではない 以上の観点から、どちらかというとWISHを推す。 <質問> Q: 日本のコミュニティとしてどこを推すかを決めないといけない。  10年前とは状況が変わっている。各班ごとにどれが必要か判断すべき。  そういうことを決めるのは、若い、しがらみのない人がやるべき。 C: 各班がどういうサイエンスが必要で、どの衛星がどの程度必要かを出し合って  総合的に判断すべき ◆銀河系、近傍銀河、星間物質班 (青木)   星間物質ー左近、近傍銀河ー金田・石原、銀河系・局所銀河 青木  主に恒星物理・超新星班と一緒に議論 <星間物質>  分子の形成・進化、恒星近傍のダスト(JWST, SPICA, TMTコロナグラフ, TAO)  室内実験の見通しー化学分野との結びつきが強い <近傍銀河>  銀河の星生成率を決める背景物理  銀河の物質(ガス・ダスト)の進化 <銀河系・局所銀河>   銀河分野との境界は「星に分解できる範囲」  銀河系中心(AGN分野と)、銀河系円盤(恒星物理分野と)  衛星ではGaia, JASMINE, TMTが必要  初代星ー銀河系で記述し後で調整、超新星元素合成ー恒星物理で記述 Q: JASMINEは必須か A: 銀河中心など、出来ないテーマが生じる。どちらにしろGaiaで忙しいだろう。 ◆恒星物理・超新星・晩期型星(野澤)  GaiaでHR図はかなり完成される。恒星物理の完成を目指す  連星進化、質量放出、元素の起源  初代星については遠方銀河班と調整  晩期型星のダスト形成は星間物質班と調整   恒星班は質量放出に対するダストの役割を重視  連星系のキーサイエンス   2020年代には重力波が検出されるだろう 中性子星連星、BH連星  離心率・質量、軌道半径など決定  元素合成のキーサイエンス   恒星自転を入れた星の進化計算が発展してきている。   r-process元素の起源   太陽についても記述  超新星のキーサイエンス   爆発前の親星・爆発後の伴星探し HST, JWST, TMT  サーベイ観測 Kiso, HSCX, WISH   shock breakout, GRB, 電子捕獲超新星、超高光度超新星  超新星爆発10-100年後の中間赤外(マルチエポック)観測  大質量星の爆発前数百年間の質量放出史を数年でフォロー(S/Nは微妙) Q: SPICAで口径を大きくすればconfusion limitは解決されるのでは A: すぐに答えられない   ※編者補足:マルチエポック観測での差分については、confusion limit  以下の情報が得られる可能性があります。 Q: 20年内にgalactic SNが見つかるかも。ニュートリノが見えたらどうするか。 A: 多波長で観測ということになるだろう C: そういった観点で夢膨らます章があってもよい C: HESS(系外惑星探査)でtransientが見つかる可能性があり、そういった展開も  あると良い   ◆星惑星形成 (高見(道))  最初の2時間あまりは星形成班だけ、その後、惑星系、太陽系班と合同  星生成、惑星系および生命系の形成と成長、系外惑星系関連 <新たに加えるテーマ候補>   小質量星生成の解明、惑星系形成、原始惑星系円盤(および原始星)の磁場   系外惑星班との境界線・または連携   進行中の惑星系探査は系外惑星系班にのみいれる(クレジットを入れてもらう)  太陽系班、ほかとも調整あり  ミッションと期待する成果(表あり)  確実に成果が出るテーマ、成功すればインパクトが大きいテーマ、2030年代の萌芽的  テーマ  TMT 最重要 コロナグラフと中間赤外装置を2020年代に搭載できるか  SPICA その次に重要 惑星系形成よりは星形成分野での重要度が大きそう  すばる WACO 投資額が少なく観測実施できそう  スペース赤外高分散、スペース中間赤外偏光 この分野では重要だが、他の分野では?  2020年代の大部分はすばる、WACOなどを中心にサイエンスを進める必要がある。 <質問> C: WFIRSTは1.6bilion USDなので大きな投資。WACOではなくWFIRSTと書くべき。   2016年にWACO、つまりWFIRSTにコロナグラフが搭載されるかどうか、またそれまで   には日本が参加どうかできるかが決まる。これはサイエンス全体に言えるが、   WISHを議論するときには、WFIRSTと比較した議論が必要と思う。 Q: スペース中間赤外偏光について、必要精度、サイエンステーマを知りたい A: 磁場。まだ検討が浅い。この波長域ではdichroic absorption、dichroic emission   など重なっていて本当に有効かどうか要検討 ◆系外惑星系 (松尾)  波長を超えて最も重要な科学は何か、そしてそれをスペース計画に落とし込むこと  について主に議論  地球型系外惑星あるいは2030年代の足掛かりになるテーマを。  2010-2020年 トランジット、マイクロレンズ、アストロメトリで大幅に進歩  WISHと中型JASMINEが最も重要   2021年に実現すれば、日本がアメリカのWFIRST-AFTAに先駆けて地球型惑星サイエンス   を実現できる  中型JASMINE   Gaia以降のアストロメトリプロジェクトはJASMINEのみ   赤外線アストロメトリ観測によるM型星・褐色矮星周りの惑星探査は独自   2020-30年代の地上・スペースの直接観測計画への足掛かりになる  WISHと中型JASMINEの両立する解を  SPICAは20umより長波長なので系外惑星の主要な科学テーマはできない  JWSTは2019年打ち上げでsecondary等に主要な研究が可能 Q: 一番重視したいのが地球生命の相対化なら、JWSTから10年経ってできる    こともあると思うが。 A: JWSTは惑星研究において重要な20umまでの観測がカバーされており、    トランジット分光によるスーパーアースでの実現可能性が検討されている。    先行研究が正しければ、JWSTにおいて重要な成果が創出される可能性がある。 (発表者 後注) JWSTにおける安定性の観点については疑問視されており、その    実現は日本でも検討すべきである。仮に実現可能性において問題がある場合、    SPICAにおける20umより短波長でのトランジット分光は科学的意義が非常に    高いと考えられる。 ◆太陽系 (関口)   班員 4名→9名(スカイプ、一部参加含む)  現状のサイエンス枠組みや担当で問題ないか確認  現状案は惑星科学を網羅しすぎとのコメントが出たが、それは敢えてそうした結果  多岐にわたるのは良い。常に装置や衛星を意識して検討することに。  TNOs/Centaurs, Cometの個体成分を見るにはSPICAが必要  組成を見ようとすると3umの氷吸収探査のためWISHが有効  H2Oが見たい場合は南極望遠鏡が重要に Q: 惑星探査計画との連携についての議論はないのか A: 協調およびテーマ棲み分けについて議論している。協調の例として、   はやぶさ2の探査候補天体をすばるで探したり、冥王星の後に行く   KBO候補探しを行っている。探査機が出る前に決めないといけないこともある。   棲み分けとしては、衛星では一点一か所を見るが、地上から多地点・時間変化   を見ることについて議論した Q: 地上観測では解らないから探査する、というふうにして地上・探査両方で   ムードを盛り上げて引っ張る必要があるのではないか。探査機は重要だがコスト   が大きいので、やれることをやるというのではインパクトが弱い。 A: 惑星学会でははやぶさ2をオールジャパンでやろうということになっている。 Q: はやぶさ2はもうすぐ打ちあがる。解析まで含めるとオールジャパンで   進めるタイムスケールはどれくらいになりそうか。 A: リモートセンシングに優れているが観測になれていないひとが多く、解析も   今勉強しているところ Q: そういったところに観測の人が乗り込んでいってはどうか A: 太陽系で観測している人が少なすぎる C: 手を広げて異次元からお金をとるような時代。そうしないとどんどん縮小   する。 C: すばるについても将来計画を考えてほしい。このままいくと、2020年代には  3つの装置だけしかない状態になる。サイエンスの観点で本当にそれで良いのか  どうか。 (議事メモ執筆: ドラフト: 川端  校閲: 松原)