------------------------------------------------------------------- (以下、発言者は敬称略) [岩田講演(初代銀河の探査)質疑] (児玉) ・Spitzerが小口径ながら遠方天体の探査に成功したことを見ると、再電離以前の 宇宙にある銀河を見られるWISHは素晴らしい計画ではないか。 ・より短い波長をカバーして広視野探査をするWFIRSTと組んで進められないか? (岩田) ・科学的な意義があるのは間違いない。ただし、2030年代にも小口径での 中間赤外線探査に大きな意義が残されているのかどうかは考えるべきである。 ・コストとリソースの観点から、US decadalで検討されているメガミッション への参加と同時に進められるかは問題であり、優先順位づけが必要である。 (住) ・再電離や初代銀河を考えた場合、そのサイエンスを行うために 本当にLUVOIRよりも広視野の探査が必要なのか? (岩田) ・宇宙初期にあるレアな天体の探査にとって重要である。 (児玉) ・宇宙初期でなくても z~4−8においても、大規模構造のスケールで銀河の星質量の 進化などを追えるのは素晴らしい。 (山田) ・口径を>1.5mとしたのは赤方偏移10を越える天体を検出するためという要請から 設定された。 ・口径を小さくして公募型小型+軽量鏡(~1m)の解はありえるかもしれない。ただし、 Spitzer(70cm)より小さくては意味がなく、また口径が小さくなることで コンフュージョンの影響が大きくなることにも注意が必要である。 ・コストドライバーは冷却試験と検出器である、冷やすこと自体の技術 はJAXAが持っている。特にSPICAでその技術が実証されれば、それに続いて 出来るはずである。 (住) ・WISHに分光を加えたらイントロダクションの話にあったスペースPFSになるのか? (山田) ・分光を加えたWISHのようなミッションは、ESAで検討されたが、 コストキャップ(700億円)を超えたため議論されていない。 ・口径2mでは暗い天体の分光はできない。 [大栗講演(ダークマター)質疑] (山田) ・銀河団重力レンズのアークの観測で、レンズを受けた天体の元の内部構造が わからなくても、詳細な構造の情報はレンズ天体の制限に使えるのか? (大栗) ・今回議論しているのは強レンズ効果で、一つの天体が複数の像を作るケース である。複数の像の情報を合わせることでレンズ天体の細かい構造の推定が できる。 (秋山) ・ダークマターの衝突断面積に制限を付ける話で、将来計画としては 今の Subaru/HSC よりもより深い探査で弱レンズ探査を行うことで、 空間分解能をあげたいのか? (大栗) ・ガスのマップはChandraから、空間解像度的に現状でも問題は無い。 ・WFIRSTでもできるかもしれない。 (住) ・アークの詳細構造を調べる話で、ダークマターの質量に制限がつくのか? (大栗) ・ダークマターとしてWDMやAXIONを想定するかで、ダークマターハローの 質量関数が小質量側にどこまで伸びるか、カットオフの位置が変わる。 (住) ・メインハローの周囲のサブハローを見ることが重要なのか? (大栗) ・視線方向にたまたまいる孤立したサブハローが見える可能性もある。 (山田) ・宇宙線の観測からダークマター起源の信号かもしれないという議論が あったが、そのことでどこまで何がわかったのか? (大栗) ・その議論自体は以前から話があり、信号がそもそもダークマター起源 かどうかは不明である。 [松尾(太)講演(スペース干渉計)質疑] (海老塚) ・提案された干渉計で観測するためには、位相測定がノイズの中に 埋もれるから光子数が相当必要ではないのか? (松尾太) ・アプローチ自体が異なる。この方式では、一般的なブロードな撮像感度 に干渉効率の掛け算になるので、感度が悪くなることは無い。 (秋山) ・10kmで数cmの精度というフォーメーションフライトは現在の技術の 延長で可能なのか? (松尾(太)) ・現在、数百メートルでmm程度の制御の技術に目処が立ちつつある。 flying formationとは別に望遠鏡内に入れる計測が重要になるだろう。 (住) ・Lisa Pathfinderはどのような精度があるのか? (松尾(太)) ・Lisa方式の実証という点で、非常に近い距離で高精度にflyingしている。 今回のflying formation方式とは異なるだろう。 (左近) ・フォーメーションフライトの技術は、HabExなどで想定しているオカルター と技術は共通になるのか? (松尾(太)) ・HabExはL2を想定しており、地球周回軌道を想定した場合は地球が 扁平であることによる重力加速度の勾配の影響を受ける。 一方で、太陽輻射による圧力という点では同じだろう。 (左近) ・松尾さんが作成した系譜図との関連でいうと、今回の提案はどこに位置 するのか? (松尾(太)) ・小口径での実証を2030年、大口径を2050年というタイムスケールで考えている。 [松尾(宏)講演(遠赤外干渉計)質疑] (秋山) ・現在実験が検討されているというCTA干渉計について、可視光で使うこと は出来るのか。 (松尾宏) ・私が提案している手法は可視光では使えない、可視光では遅延時間が 測れないという問題がある。 [住講演(LUVOIR/HabEx)質疑] (児玉) ・現在の US decadal の議論は系外惑星以外の研究者にとっては LUVOIR の方が魅力的である。 (住) ・両方はできないが、LUVOIR と HabEx の検討の合併は可能性が ある。 ・コミュニティ的にはLUVOIRが支持されるが、予算的にはHabExが 現実的であるという印象である。 (秋山) ・LUVOIR UVのカバレッジが重要になるサイエンスケースは何か? (松尾(太)) ・惑星分野的には大気散逸の問題がある。 ・HabExは、現時点で系外惑星の撮像に重きを置いているが、  将来的にgeneral scienceも重要になるだろう。Post-HSTの位置付けを  考えれば、UVの波長帯は鍵になると予想される。 (住) ・系外惑星的には紫外線にあるオゾンの吸収線の観測と IWAを下げることにある。 (山田) ・6mのHabExはOpt/IRではJWSTには勝てない、HabExにとっては UVが鍵となる。 (松尾(太)) ・コロナグラフをUVで行うには、波面補償と望遠鏡の両者に求められる仕様が  非常に高くなり、計画自体が高価になるだろう。 (家) ・コストはどのくらいが想定されているか? (住) ・JWSTよりは安くなる見通し(安くしなければならない)。  ・それぞれ4000−5000億円としており、口径15mは厳しいかも しれない。 (鈴木) ・HabExはスターシェイドありきなのか? (住) ・ありきである。 ・宇宙空間でのシェイドの移動に時間がかかるので、その間に ジェネラルサイエンスを行うのが計画である。 (松尾(太)) ・スターシェイドは、暗領域を数mの範囲にしか 作れないので、口径4mのHabExと相性が良い。 ・LUVOIRの場合、開口の一部だけが暗領域になってしまう。 (秋山) ・これらの計画に向けた小型実証はどのような計画があるのか? それを日本の小型衛星で担う可能性はあるのか? (住) ・そのような担当を進める必要性は認識しているが、何ができるか が不明である。 ・これらのミッションの中の1つの装置でも戦略的中型クラス、 いきなりそれを担当することができるか? ・小型で実証がまずありきだが、サイエンスも同時に実行すること は難しい可能性が高い。 ・そういう技術実証の枠組みが宇宙研にあると良い。 (左近) ・メガミッション的には、安全なものを載せなければという考えである。 ・PDRは2026年なので、そこがスケジュール的な制限となる。 ・目的特化で超小型でスピーディに技術実証をするという方向性はありうる かもしれない。 (山田) ・LUVOIRに日本が貢献するとすると、何かの装置というのが現実的か と考えている。 ・宇宙研にはこの規模のミッションに装置を提供した実績はない、 SPICAが初めての機会となる。 [左近講演(OST)質疑] (秋山) ・日本側での装置の検討のグループ構成はどのようになっているのか? (左近) ・3つのチームがパラレルで検討をしていて総勢で20人くらい、 メンバーはSPICAとの重複がないように注意している。 (松尾) ・想定されるスケジュールはどのようになっているか? (左近) ・2035年ごろに打ち上げ、LUVOIRなどと同じである。 ・2026年ごろにPDRとなる。 ・ライフタイムは5年、サービスについては確認する。 (山田) ・感度についてはハーシェル-->SPICAで100倍、 SPICA-->OSTで10倍のゲインがある。 ・SPICAからの10倍が効くサイエンスは何か? (左近) ・現在考えられているのはSPICAでは感度でリミットされる 初代ダストやSPICAでは機能が無いコロナグラフである。 [郷田講演(アストロメトリ)質疑] (秋山): ・JASMINEの議論の時に、WISHと併せた戦略的中型の議論が 行われたが、それは現在も有効なのか? GaiaNIR も合わせたプロジェクトに出来ないのか? (郷田): ・GaiaNIRがどのように進むかわからないが、 中型JASMINEはWISHと合併できる可能性はあると思う。 ・GaiaNIRに入る場合には、実現できれば小型JASMINEが 先駆けとなり、独自の技術(データ解析手法も含む)や 科学的議論をリードできるだろう。 (住): ・GaiaNIRはGaiaと同じ方式なのか、それとも小型JASMINEと同じ方式か? (郷田): ・GaiaNIRは、現時点での第一候補は、Gaiaと同じ方式の全天サーベイを 考えている。そのためには、TDIモードが可能な赤外線検出器の開発が 必要でそれが大きな課題となる。また、鏡のサイズも少し大きくしなければ いけないだろう。ただし、今後の検討結果によっては、コストや技術的な 問題等でGaiaNIRは、中型JASMINEの仕様に近づく可能性もあり、 そうなれば、小型JASMINEと同じ方式になる。 (住): ・JASMINE方式の場合、望遠鏡のStability要求は厳しくなるのか? (郷田): ・望遠鏡の指向擾乱の要求や望遠鏡構造の熱的な安定性要求は JASMINEでは、厳しいが、Gaia方式においても(要求する部分が異なるが) 厳しさは同程度である。 (山田): ・WISHはL2なので、Small-JASMINEの仕様は満たしたが、中型JASMINE については分からない。 ・中型JASMINEについては、WFIRSTが延長できれば、その1-2年を使えば、 実現できるのではないか? (郷田): ・L2だと温度安定性は有利だが、望遠鏡構造の熱的安定性が厳しく 要求される。そこを満たすかどうかが肝要で、熱的な安定性に関しては、 WISHでやる場合は、あらかじめシステム要求を出し、打ち上げ前に 仕様を決めておかないといけない。 WFIRSTは既存の望遠鏡を使うため システム要求は出せず、現存の望遠鏡が要求を満たし得るかを調べる 必要があり、今後、試験での確認が必要である。 [津村講演(惑星間望遠鏡)質疑] (高橋) ・黄道光から抜け出ることが出来るメリットが出る波長域は、中間赤外線 になるのだが、その場合は冷凍機がいるのではないか? (津村) ・波長の長いところでは効いてくるだろう。一方で、シールドで適切に 放射冷却できれば、80Kまで冷却できると考えている。 (山田) ・中間赤外線のあたりで、photometryの深い観測ができるとは思うが、 一方で、小さい口径を想定するとconfusionがあるので、そこが検出限界 を決めることになるのではないか? (津村) ・おっしゃる通りで、それはこれからの検討課題としてある。 (秋山) ・WISHを惑星間望遠鏡でできないか? (津村) ・WISHは5umまでの波長なので、黄道光を抜けるゲインはあまりない。 (住) ・機能としては戦略的中型の枠内でできるのか? (津村) ・LUVOIRなどの国際協力に参加するミッションと並行して行えると 考えている。 [矢野講演(アストロバイオロジ)質疑] (山田) ・LUVOIRなどによる衛星からのプリュームの観測で何を見たいか? (矢野) ・どれくらいの高さまで、どれくらいの量が飛んでいるのか? ・その情報を元に衛星内部にアクセスする探査機の設計に活かす。 ・地下海がどれくらいの期間維持できるか、そのエネルギー源は何か? に制限がつく。 ・プリュームの分光で有機物やシリケイトの存在を探る、シリケイト が存在すれば熱水鉱床との関連も示唆される。 (左近) ・宇宙での実験的なアプローチと系外惑星天文観測との関連は何か? (矢野) ・ダストは望遠鏡と顕微鏡の両方が見られるほぼ唯一の対象と思う。 ・それを系外惑星に適用したい。太陽系のダスト構造を系外惑星に応用 することなどが考えられる。 ・国際宇宙ステーションでのタンポポプロジェクトの結果をどのように 天文にフィードバックできるかは課題となっている。 (海老塚) ・インターステラーダストはタンポポで見つかるか? (矢野) ・現状で見つかっていない。まだ2年目の資料は見ていない。 ・現時点では大きいダストの初期分析のみである、 インターステラーダストは小さいはずなので、まだ分析されていない。 [森講演(宇宙工学)質疑] (海老塚) ・SPSで地球帰還時にダスト収集は可能か? (森) ・技術的には可能であるが、現状のミッションとしては想定していない。 (海老塚) ・太陽方向からの小惑星を見つけるためのミッション にはL1のほうがいいのでは? (森) ・赤外線での探査を考えており冷やしたいのでL2に持って行く。 ・外惑星の領域へのアクセスを狙う宇宙基地構想的にもL2の方が良い。 (住) ・2030年代にはどういう提案があり得るか? (森) ・SPSの実験機を踏まえてSPSの本番機を提案したいと考えている。  このミッション内容としてはエンケラドス探査を想定しているが、  惑星間望遠鏡もあり得る。  SPS以外では、火星着陸ミッションが再提案される可能性がある。 [安東講演(重力波)質疑] (左近) ・X線のカウンターパートの発見が遅れた時期になっているのは初期 の観測がなかったからか? (安藤) ・違う、実際に9日後から光り始めた。これ自体が重元素合成を意味する 重要な結果となった。 (住) ・B-DECIGOは戦略的中型を想定しているが、複数の小型で実現する 可能性はあるのか? (安藤) ・複数の小型で行う方が高くつくと思っている。 (住) ・一方で機会は小型の方が多いのではないか。 (松尾(太)) ・望遠鏡間隔100kmに対して光路長をどれくらいの精度で制御されるのか? (安藤) ・感度は10の-18mであるが、望遠鏡間隔の精度は10の-9m程度。 (松尾(太)) ・Decigo方式は望遠鏡間で制御しているので、Lisa方式と異なるように  思われるが、正しいか? (安藤) ・Lisaはopticalトランスポンダーを採用している点で異なる。  ただし、drag freeの技術などは同じ技術を採用している。 [百瀬講演(電波)質疑] (山田) ・SKAに対する日本の戦略はどうなっているか? (百瀬) ・SKA建設は大量生産されるハードウェア面の貢献だけでなく、 データ処理に必要なソフトウェア面での貢献も重要な開発要素 である。SKA Precursors での活動へ人を送りこむことなどに より、その面でも経験を積むよう、日本SKAコンソーシアムを 中心に努力している。 (海老塚) ・VSOPの次期計画ようなものは考えられているか? (百瀬) ・ない。 [全体議論のメモ] (秋山) ・2030年代に今の小型・戦略的中型の枠にどれくらいとらわれる必要が あるかは考えないといけない。 (山田) ・30−40年代にそれらの枠にとらわれる必要はないが、好きなように枠が 設定できるわけではない。 ・そこにつながる工程・戦略という観点から計画を立てていかなければ ならない。 (津村) ・one-JAXAで大規模科学ミッションの可能性はあるのか? (山田) ・one-JAXAという方向性には向かっているが、だからと言って大規模な ミッションができるとは限らない点には注意が必要である。 (海老塚) ・民間や寄付などにより実現する方向性もあり得るのではないか。 現時点では予算の枠にとらわれなくても良いのでは? (家) ・中国の動向も気になる。重力波の衛星計画も紹介されていた。 (山田) ・国主導で大きなミッションをやってくるだろう。 (住) ・B-Decigoのflying formationの技術は、光赤外のスペース干渉計にも応用できるはず。 (松尾太) ・実際、B-Decigoは0.1 - 10Hzのノイズを低減している点、基線長が類似している点で  スペース光赤外干渉計の仕様と類似している。 ・共通の要素技術があると思われるので、共同で検討や開発が進められると良い。  両者がともに実際のミッションになるような青写真が描けると良い。 (左近) ・2030年代のメガミッションのためにはすでに動き出さなければ ならない、そのための実績作りが重要で、だからこそ回転周期の短い 小さいものの戦略が重要となる。 (住) ・だとすると現時点で日本で実証できている技術は冷凍機しかない。 次はフォーメーションフライトを目指すのか? (左近) ・他にも超小型やISSで実証するという可能性も探るべきである。 (津村) ・現時点で実証できている日本の技術的強みにはイオンエンジンや ソーラーセイルもある。 (住) ・2030年代で中型は3回、その中で赤外は1回だろう。そうすると USメガミッションへの参加か独自か、あるいはUSメガミッション参加 を小型規模にして、独自中型かという選択肢が現実的ではないか。 ・赤外以外の戦略的中型ミッションで、我々にも役立つ技術が実証 できればお互い良いシナリオである。 (津村) ・EXZITはまさにそれで、宇宙工学・惑星探査のミッションで、 赤外天文ができるというものである。 (百瀬) ・枠にとらわれないことも重要だが、一方で惑星探査は、サイエンス だけが主導するわけではなく、戦略的に機会があって行けるところに 行くという側面もある。そのような要因で主導されるケースにも対応 する柔軟性も必要かもしれない。 以上です。 ----------------------------------------------------------